北朝鮮が2020年12月に入って、北朝鮮の特務機関である国家安全保衛部の下部組織である国家安全保衛大学の学生と教官ら約2500人を中国と韓国と国境を接する市町村に派遣したことが明らかになった。住民らが国境を越えて脱北しないか監視することが大きな狙いだという。
また、北朝鮮は2020年初めから新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中国との国境を閉鎖していることで、中国から食糧や生活必需物資が入ってこないため、地域住民の生活状態や政府への不満などについても調べる目的があるとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
国家安全保衛部は秘密警察の役割を果たしており、北朝鮮国民の「反抗的な要素」を排除する任務を負う治安部隊といわれている。最高指導者の金正恩朝鮮労働党委員長の「目と耳」とも例えられており、彼らから告発されて強制収容所行きとなり、そのまま消息が途絶えて党高官も多い。
国家安全保衛大学は同部に従属しており、在学中に銃などの武器の取り扱い方や尋問の仕方、あるいは海外に出ても困らないように、英語はもちろん日本語や中国語などの外国語を学ぶほか、スパイとして機密情報の窃取などの機密情報獲得のためのあらゆる訓練を受けているという。
同大の卒業生は大半が国家安全保衛部の職員となり、北朝鮮の機密工作を担うことになる。
RFAが現地の住民から得た情報として伝えたところによると、学生たちは中韓両国の国境地帯の町や村の宿泊施設に泊まり、2~3人一組で毎日、住民の家を訪問し、生活の状態などを訪ね、「生活に不満はないか」「食料は足りているか」「仕事はしているのか」「失業していないか」「近くで不満を持つ人はいないか」などと事細かに尋ねているという。