2021年も、まずは国民の最大の関心事はコロナ禍をどう克服するかだろう。欧米ではすでにワクチン接種が猛烈な勢いで進められており、その効果に期待が集まっているが、実際に効果があるのか、重篤な副反応などは出ないのかがはっきりするには、数か月から数年かかると見られている。
『週刊ポスト』(2021年1月4日発売号)では、国民の意見が真っ二つに割れている22のテーマについて、それぞれ専門家が異なる立場から主張を展開している。そのなかで、コロナワクチンを接種すべきか、まだ様子見すべきかを論じ合ったのが、ナビタスクリニック理事長で一般社団法人医療ガバナンス学会代表理事の久住英二氏(接種派)と、新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦氏(様子見派)だ。それぞれ傾聴に値する視点で論じているが、打つか打たないかとは別に、両氏は取材で国民が知らないコロナの真実をいくつも明らかにしていた。この記事では、本誌に収録できなかった、注目すべき両氏の指摘を紹介する。
久住氏は、接種を勧める根拠のひとつとして、実は国内の感染者は報道されている、あるいは国民が思っているよりずっと多いことを挙げた。
「私が聞いた話では、都内中心部の医療機関では、2020年12月現在、PCR検査の陽性率は1%近いそうです。また、世田谷区が独自に実施している介護施設などの職員を対象としたPCR検査の陽性率は、同12月前半で1.46%になっています。連日、報道では東京都の感染者が〇百人などとされていますが、それはあくまで検査で新たに判明した数であって、実際の感染者は何倍もいることが確実です。上記のような陽性率1%超という情報も、公表してしまうと国民がパニックになりかねないから公表されないのです」
一方で久住氏は、多くの国民が勘違いしているもうひとつの数字について指摘した。
「新型コロナに限らず、『死亡率』といった場合に、発症した患者における死亡者の比率(CFR)を指すことと、無症状を含む感染者における死亡者の比率(IFR)を指すことがあります。当然、IFRのほうが母数が大きいから、比率はCFRより低くなります。ところが、日本では無症状の人まで幅広く検査していないので、正確なIFRがわからない。だから、報じられている『死亡率』というのはCFRのことで、当然、死亡率が高いように感じてしまうのです」