在宅勤務の増加や年末年始のステイホーム生活などで、“家飲み需要”が高まっている。ついつい飲酒量が増えてしまいがちだが、2021年はその反動でノンアルコール飲料の市場が急拡大する可能性があるという。経済ジャーナリストの河野圭祐氏が予測する。
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毎年、年明け早々にビールメーカー4社は事業方針説明会を開いているが、2021年は各社とも例年以上に“ノンアルコール市場”への取り組み説明に割く時間が増えるかもしれない。
ノンアル市場は、ざっくり言えば年間販売が2300万ケース弱(1ケースは大瓶換算20本)で、うちノンアルビールテイスト飲料が約2000万ケース、残りがノンアルのチューハイ、カクテル、ワイン、日本酒となる。市場規模はまだまだ小さいものの、2009年と比較すれば4倍のマーケットで、ここ数年もジワジワと増えてきていた。それがコロナ禍を機に、増え方の角度が上がっていきそうなのだ。
2020年10月に発表された「サントリーノンアルコール飲料レポート」によると、コロナ禍で在宅比率が高まったことや、連動して運動不足による体重増の人が増えたことも相まって、健康・免疫への意識が高まり、20代~30代を中心にノンアル商品を飲む機会が増えているという。
飲用機会が増えた理由は、「美味しくなったから」が最も多く、次いで「在宅比率の上昇」「健康意識」「リフレッシュ」「休肝日」の順だそうだ。加えて、ノンアル商品は軽減税率の対象だったことや、2020年10月の酒税改正にも無関係だったことから、今後も価格優位性があり、消費者も気軽に手を伸ばしやすい。
内臓脂肪を減らす、尿酸値を下げるノンアル飲料も
振り返ると、アルコールゼロのビールテイスト飲料は、2009年発売の「キリンフリー」が始まりだ。当時、キリンビールに在籍して同商品を世に送り出した佐藤章氏(現・湖池屋社長)は、こう語っていた。
「きっかけは、2006年に福岡で幼い子供たちが犠牲になる痛ましい飲酒運転事故が起きたこと。それを機にノンアルビールの開発が始まりました。結果としてセールスにも繋がりましたが、企業は売り上げや利益だけでなく、社会貢献も重要になってくると気付かされたのです」
翌2010年にはサントリーから「オールフリー」、2012年にはアサヒビールから「ドライゼロ」が発売され、ノンアル市場は徐々に拡大していく。
現在、ノンアルビールテイスト飲料のシェアは、アサヒ、サントリー、キリンの順だが、ここ1年余りで機能性を打ち出す商品も続々と登場している。サントリーの「からだを想うオールフリー」やキリンの「からだFREE」は内臓脂肪を減らす点をアピールし、サッポロビールも尿酸値を下げる効果があるという「うまみ搾り」を発売している。