標高3776メートルの富士山は古くから霊山と崇められ、畏敬の念と憧憬の念を日本人に抱かせてきた。縁起物としても親しまれ、年賀状のイラストや写真、初日の出、初夢など、富士山を見て新年を迎えることに幸せを感じる人も多いだろう。
美しさや偉容に魅了されるのは日本人だけではない。富士山が世界文化遺産に登録された2013年以降は、インバウンド(訪日外国人)需要も重なり、訪れる海外の人々がさらに増加していった。一昨年までは例年、旧正月にあたる2月の「春節」の時期にとりわけ大勢の中国人観光客が日本を訪れ、雪景色が美しい富士山の撮影スポットにも押し寄せていた。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった1年前に続き、収束の兆しがみえない今年の冬も彼ら外国人観光客たちの姿は裾野にはない。コロナ禍以前の賑やかさを取り戻すのは、果たしていつになるのだろうか──。人々が集う富士山の風景をお送りする。
●富士海岸(静岡県富士市・沼津市)
高潮や高波に備え、富士川河口から沼津市に至る富士海岸には約20キロにわたる防潮堤が築かれている。富士市側の堤防は高さ17メートルにも及ぶ。
●忍野八海(山梨県忍野村)
世界文化遺産の構成資産の1つである国の天然記念物「忍野八海」は、富士山の伏流水を水源とする湧水池。富士修験の霊場でもある8つの池からなり、八海一の湧水量を誇る「湧池(わくいけ)」から望む富士山の秀麗な姿は海外にも知れ渡る。コロナ禍前は大勢の訪日外国人が押し寄せた。