コロナ禍で大学の授業のほとんどがオンライン化してから、早くも1年弱が経つ。オンライン授業には多くの問題があったが、当初の課題は解決しているのだろうか。今後のオンライン授業はどうなっていくのか。元教員でICT教育事情に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、大学のオンライン授業の現状と今後について解説する。
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「入学式以来、一度も大学に行けていない。同級生の友だちはゼロ。毎日オンライン授業と課題に追われている。困っても相談できる友達がいなくて、気づくと涙が出ていることがある」と大学生から聞いたのは、2020年の夏頃だ。ほとんどの大学がオンライン授業のみで校内に立ち入れなくなっていたためだが、その後、多くの大学で対面授業が再開している。
文部科学省の「大学等における後期等の授業の実施方針等に関する調査」(2020年9月)によると、後期授業ではほぼすべての大学が対面授業を実施。約8割が対面と遠隔の併用を予定している。対面・遠隔を併用する大学のうち、約6割が授業の半分以上を対面で実施予定だ。また、約6割の大学で、おおむね全員の学生が週に2日以上通学できると回答している。
上記で分かる通り、対面授業は始まったものの、まだまだオンライン授業が多くの割合を占める。オンライン授業の現状はどうなっているのか。
学び・コミュニケーション上の問題は大きい
まず、改めて授業の種類について整理しよう。従来の対面型と、パソコンやスマートフォン経由で受講するオンライン型に分かれ、オンライン型にもリアルタイム型、オンデマンド型がある。リアルタイム型はZoomやTeamsなどのウェブ会議システムを通じてリアルタイムにチャットなどを通じてやり取りしながら進めるものであり、オンデマンド型は事前に収録した動画を見せるものだ。
大学での学びには、実験や実技、演習など、対面でなければ難しいものも多い。しかし新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発せられていた2020年前期は、そのようなものもオンラインで済ませる傾向にあり、学生側の不満が募っていた。そこで、後期の授業については文部科学省が大学側に対面授業再開を要請、10月には「対面講義の割合が5割に満たない大学は大学名を公表」(萩生田光一文部科学大臣)と宣言することになったというわけだ。