2020年大晦日の『NHK紅白歌合戦』は第2部の視聴率40.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)で、2年ぶりに40%の大台に乗せた。新型コロナウイルスの感染拡大による在宅率の上昇でテレビの総世帯視聴率がアップしていたこと、過剰な演出を行わずに歌をじっくり聞かせたことなど様々な理由が考察されている。
それらに加え、裏番組の『第53回 年忘れにっぽんの歌』(テレビ東京系)と比較すると、もう1つの重要な要素が鮮明になる。演歌を中心に昭和や平成の懐メロが歌唱される『年忘れ』には、かつての『紅白』の顔が続々と登場。紅白への出場経験がありながら、2020年は不選出となった『年忘れ』出演歌手は69組にも上る。その中で、紅白出場回数ベストテンを算出してみよう(※特別出演含む回数。名前横は最後の出場年。『年忘れ』でソロ、『紅白』でグループ出場の場合は、ソロのみカウント)。
1位:51回 北島三郎 2018年(特別出演。その前の出場は2013年)
2位タイ:39回 和田アキ子 2015年
2位タイ:39回 細川たかし 2015年
4位:34回 小林幸子 2015年(特別出演。その前の出場は2011年)
5位:29回 都はるみ 1997年
6位:26回 美川憲一 2009年
7位:24回 川中美幸 2011年
8位:23回 八代亜紀 2001年
9位タイ:22回 水前寺清子 1986年
9位タイ:22回 伍代夏子 2015年
ランキングを見ると、30回以上の和田アキ子、細川たかし、小林幸子という大御所が2015年を最後に紅白に出場していない。48回の森進一も同年限りでの勇退を発表した。
この年は、当時紅白史上最低の39.2%(第2部)を記録。40%の大台を割り、2年前の44.5%から5.3%も下落した衝撃は大きかった。そのため、NHKは“ベテラン斬り”の改革を断行したと考えられる。紅白は同年を境に大きく変貌したのだ。
2015年と2020年の全体の曲目を比較すると、その具体的な内容も明らかになる。2015年はトリの近藤真彦『ギンギラギンにさりげなく』、松田聖子『赤いスイートピー』を始め、美輪明宏『ヨイトマケの唄』、和田アキ子『笑って許して』、森進一『おふくろさん』、細川たかし『心のこり』、レベッカ『フレンズ』、高橋真梨子『五番街のマリーへ』『桃色吐息』など20曲も昭和発表の歌だった(藤あや子が2003年にカバーした『曼珠沙華』は含めない)。