夫が先立つことを妻が察したとき、そこに覚悟がなければ充分な準備はできない──。
「私たちの結婚は、まさに『覚悟婚』でした」。そう振り返るのは、元TBSアナウンサーの山本文郎さん(2014年2月逝去、享年79)の妻・由美子さん(54才)だ。文郎さんが前妻に先立たれた後、由美子さんと再婚したのは2008年。31才離れた年の差婚は、世間を大いに賑わせた。
「籍を入れず、茶飲み友達のままでもよかったのですが、仮に山本が入院するようなことになったら、家族でないとさまざまな手続きができません。彼がアナウンサーとして生涯現役でいられるような体調管理やスケジュール管理をすることもあわせて、『家族として、私が最期までつき添います』という覚悟で入籍しました」(由美子さん・以下同)
結婚当時、文郎さんはすでに73才。近い将来に必ずやって来る別れを見据えた新婚生活となった。夫と死別した妻が、遺産整理の手続きに苦労するケースはよくある。山本夫妻は文郎さんの生前から、手放せるものを吟味して、スリム化を図っていた。
「5つ以上あったクレジットカード、株やゴルフ場の会員権など、山本に確認しながらどんどん整理しました。この機に人脈も整理しておこうと思い、年間2000枚送っていた年賀状を約500枚にして、毎回3ケタあったお中元やお歳暮も可能な限り減らしました」
特筆すべきは、残された妻をサポートする仕組みまで築いたことだ。
「山本は自分が亡くなった後を考慮し、仕事やプライベートの場で、大勢の知人に私を紹介してくれていました。おかげで入院時や亡くなった際の連絡や、葬儀の手配をスムーズにできました。山本と深いつきあいのある方々との交流は現在も続いていて、あらゆる面でサポートをしてもらっています」