首都圏で再び発令された緊急事態宣言で、経済に与えるダメージは計り知れないが、飲食業界とともに“コロナ倒産”の拡大が懸念されるアパレル業界は一体どうなってしまうのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏が予測する。
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新型コロナに始まり新型コロナに終わった2020年──。小売店や百貨店の休業、自粛生活の長期化などもあり苦境に陥ったアパレル業界ですが、2021年はどうなってしまうのでしょうか。神ならぬ身ですから、見通せることは多くはありませんが、確実だと思われることをいくつか挙げてみましょう。
まず、アパレル業界に限らずコロナによる長期休業や景気低迷で何が起きたかというと、倒産・廃業とリストラの拡大です。倒産や解雇の憂き目に遭わなくても、時短営業による減給やボーナスカットで手取りの減少を経験した会社員、非正規社員も増えました。収入が減った世帯が増えるとどうなるか。衣料品に限らず、低価格志向が強まることになります。
コロナ禍で真っ先に削られる「衣料費」
「ファストファッションは悪だ」「低価格衣料品は悪だ」と見なす人が世間にはいますが、収入が減った人はまず何を考えるのかというと、支出の削減です。しかし、今まで高額な食品ばかりを買っていた家庭以外では食費はあまり削れませんし、子どもの学費や交通費なども大きくは削れません。
そこで家計の中から真っ先に削減されているのが、衣料品です。衣食住という言葉がありますが、現在の日本社会において「衣」は生活必需品としての性質が薄くなっています。
多くの人は何か月間も洋服を買わずに生活できるほどの枚数を所有していますし、毎年、毎シーズン、新しい洋服を買うのは「嗜好品」「趣味の商品」として購入しているのです。半年か1年くらいは買わずにいても困らないのですから、真っ先に洋服への支出は減らされることになります。
そうなると、売れ残りが増えますから、アパレルブランド間の値引き競争が激しくなったり、低価格商品の供給が増えたりすることになります。コロナ禍が続く2021年も低価格ブランドが主導して、価格競争が一層激烈になるでしょう。