体当たり企画でおなじみの、女性セブンのアラ還ライター“オバ記者”こと野原広子が、世の中で話題になっているトピックにゆる~く意見を投げかける。今回、オバ記者が注目したのはNHKの朝ドラ『おちょやん』。このドラマをきっかけに、オバ記者が思い出したこととは……。
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コロナ禍で何の予定も立たない年末年始を、NHK連続テレビ小説『おちょやん』を時計代わりにして、なんとかしのいでいる。
まず、主人公の竹井千代の子供時代の設定がすごい。
酒浸りで働かない父と弟のために5才から家事をこなし、養鶏場で鶏の世話をしているというんだもの。そして9才で道頓堀の芝居茶屋に女中奉公に出て、学校に行かず働き、18才になった千代。これから物語はいよいよ佳境に入っていく。
って……逆境を跳ねのけ、健気にがんばる主人公は朝ドラの定番だけど、今回は、やけに胸がザワつくの。
原因はわかっている。フタをしていた私の過去を、千代がえらく刺激するのよ。というのも私自身、いまは完全に消滅したであろう“年季奉公”の経験者だからだ。
奉公といっても、大きく分けて2種類あってね。
たとえば、職人が腕を磨くために親方の家に住み込んで一から教わる。これは、伝統工芸の世界でいまでも残っている徒弟制度。もっとも、いまでは住み込み形式はほとんどなくて、アパートなり親方の家の離れなりに部屋を与えられて、それなりに個人の自由はある。
で、もう1つが、私が体験した形で、千代もそうだけど、奉公に出る前にいくばくかのお金が親に支払われる。
といっても、遊郭に売り飛ばされたわけではないから、たいした金額じゃない。私の場合は、高校生になるための資金が必要だったの。
というのも、思春期を迎えた私と極限まで不仲になった義父(当時39才)が「中卒で働け。そうでなければ、家から出て行け」と言い出したからなの。
母親は「離婚してもヒロコ(オバ記者のこと)を高校には行かせてやる」と言うけれど、そうしたら、11才年下で当時まだ4才の弟はどうなる。
そんなある日、町内のある商店(建築資材を扱っている家族経営の店)が、住み込みで働くことを条件に、県立高校の入学金と支度金を用意してくれると申し出てくれた。
こうして晴れて高校生になった私は、登校前に、店の家族と長く住み込みで働いているお姉さんの衣服の洗濯をして、ご飯を炊いて、自分のお弁当を詰める。下校後は、店の手伝いを夜寝るまで。盆暮れと試験前の数日は家に帰してくれたけど、それ以外は無休。雇用主は社長ではなく、旦那様と奥様だ。
それで食事と毎月7000円をいただいた。この中から高校の月謝と後援会費、合わせて4500円を払い、残りの2500円でお弁当のおかずと、身の回りのものを買う。
昭和48年のことだけど、レコードを買うとか娯楽に使うお金なんて、とてもじゃないけど残らなかった。