2020年には様々なイベントや催し、夏の甲子園大会やインターハイなどスポーツの全国大会がいくつも中止された。年末からようやく、様々な大会の催しが可能な雰囲気が強まっていたのだが、スポーツの裾野を支える子供たちが主役の大会では、一足早く感染再拡大への緊張感が強まり、それによって友情や連帯に亀裂が入りつつあった。ライターの森鷹久氏が、当事者である子供たちが置き去りにされているスポーツをめぐる混乱についてレポートする。
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年末年始、テレビをつけるとサッカーにラグビーに駅伝とスポーツ中継がずらりと並んでいた。これだけ見ていると、ウイルスの感染対策さえしていれば「スポーツは可能だ」と思えてしまうが、アマチュアスポーツ、特に子供達のスポーツ環境、学校の部活動を取り巻く環境は、崩壊寸前だ。
「年末に行われることになっていた試合は全て中止。ですが、年明けの大会は開催が決まりました。子供達だけでなく、親も『最後の大会ができる』と喜んでいたんです」
こう話すのは、千葉県北西部在住の会社員・依田雄介さん(仮名・40代)。
千葉北西部といえば、有名強豪高校の部活動内で新型コロナウイルスの集団感染、いわゆる「クラスター」が発生。全国大会を辞退するなど、学生諸君にとっては残酷な対応がとられたが、その影響から、サッカークラブに所属する依田さんの小学6年生の息子も、予定されていた練習試合、大会は全て中止になった。
もちろん、皆がそれなりに対策をして取り組むのではあるが、近隣高校の部活動で「クラスター」が出たという衝撃は大きく、地域の小中学生スポーツの練習、試合は軒並みストップ。このままでは年明けに予定されている小学校最後の大会もできないのではないかと肩を落としていたというから、開催の判断を親子で喜んでいた。しかしその一方で、この判断を「不適ではないか」とする人たちもいた。
「子供達は全員が喜んでいました。しかし、親の中には、今の状況で試合をやるのか、うちの子供は辞退する、という考えの方もいらっしゃいました。もちろん考えは人それぞれですし、尊重されるべきです。しかし、子供達にはそんな親心はわからない。せっかく練習したのに、最後の試合なのに来る人と来ない人がいる、ということで妙な空気が生まれ、一部の子供達は対立するようになってしまった。これでは試合どころではありません」(依田さん)