1月8日にソウル中央地裁で出された慰安婦判決の激震が続いている。日本政府に対し、元慰安婦と遺族に一人あたり1億ウォン(約950万円)を支払えという内容だが、これを受けて同地裁は、予定されていた別の慰安婦裁判でも公判日程を延期するなど、今後は「日本政府への賠償命令」が続出するおそれも出てきた。
この判決をめぐっては、そもそも慰安婦問題について事実に基づかない原告の訴えを全面的に認めていることも問題だが、それ以前に、国家は他国の裁判権に服さないという「主権免除」という国際法を無視していることが特に注目された。判決理由では、旧日本軍が行ったことは反人道的犯罪だから主権免除の対象外だとしているが、これは説得力がない。
確かに主権免除には例外規定がある。反人道的かどうかにかかわらず、「不法行為例外」として、生命、身体、財産の損傷や滅失に対する賠償請求などでは主権免除が援用されないとする規定である。ただし、これが適用されることはほとんどない。過去には、第二次世界大戦中にドイツ軍の捕虜になったイタリア人が、強制労働させられたとしてドイツ政府を相手取ってイタリアの裁判所に損害賠償請求したことがある(1998年)。イタリア最高裁は、一審、二審の判断を覆してドイツ政府に賠償を命じたが(今回のソウル中央地裁と同様の判断)、ドイツが国際司法裁判所に訴えた結果、同裁判所はドイツの主権免除を認めて、イタリアの判決は国際法違反であると結論づけている。判決理由では、国家や軍による主権的行為については他国の裁判権から免除されると改めて明示された。
上記判決は2012年に出された新しいものであり、韓国の裁判官たちも知らないはずはない。だからこそ、「人道に反する」などの理由をつけて、「日本の行為はドイツ軍よりひどいから、こちらは主権免除されない」という理屈を作らなければならなかったのだろう。
しかし、旧日本軍の慰安婦が、捕虜の強制労働より非人道的な扱いを受けたという事実はない。慰安婦が強制連行されたというのは、自称元軍人の証言や一部の元慰安婦の証言により流布された話だが、それらはこれまでに歴史家の検証などで、いずれも事実とは認められないと結論づけられている。だからこそ、韓国や日本の慰安婦支援団体などは、のちに強制連行の主張を引っ込めて、最近では「本人の意思に反する就業があったのだから“広義の強制性”があった」という苦しい言い方をしているのである。
実際には、慰安婦は連行されたのではなく、募集に応じて就業していた売春婦である。当時の日本には公娼制度があり、慰安婦も慰安所も完全に合法だった。慰安婦には給料が支払われていたし、身体的な拘束があったわけでもない。医療や検査も受けていた。「強制連行」だけでなく、「性奴隷」だったという主張も全く事実に反するのである。むしろ、公的な職業として認められていた当時の売春婦に対する侮蔑的な表現でもある。もちろん、本人の意に反してその職に就いていた慰安婦がいたことは事実だろう。そのほとんどは、貧困などの理由で親に売られた人たちで、貧しい農村などで親にカネを渡して慰安婦を集めていたのは、主に韓国人の女衒だった。