新型コロナの感染拡大が止まらない中、一刻も早いワクチンの接種開始が待たれるが、「ワクチンには副反応があるので、接種したくない」という声もよく聞かれる。それでは、ワクチンの接種を進めて集団免疫を確立するにはどうしたらよいのか。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。
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新型コロナは、年末年始を経て急激に感染が拡大している。イギリスでは感染力の高い「変異種」が出現して猛威を振るっている。各国の拡大防止策にもかかわらず、収束の見通しは立っていない。日本では緊急事態宣言が再発令された。1月8日から1都3県に適用され、1月14日からは適用地域が11都府県に拡大されている。
そんな中、昨年12月に欧米各国でワクチンが緊急承認され、接種が開始されている。日本でも製薬メーカーからの申請を最優先で審査し、承認後には速やかに接種が始まるものとみられる。現段階では2月下旬には接種開始となるよう準備が進められているという。
ただ、ワクチンには副反応がつきものだ。副反応を心配して、「ワクチンは当面打たないでおこう」と考える人も多い。たしかに、ワクチンを打たなくても周りの人が打ってくれれば自分には感染しないはずだ。
これは「ワクチンのただ乗り(フリーライダー)問題」と呼ばれ、ゲーム理論を使った疫学モデル(「ワクチン接種ゲーム」と呼ばれる)で研究されている。それでは、ワクチンのただ乗りを減らして、集団免疫を確立するにはどうしたらよいだろうか? 少し考えてみたい。
ワクチンを「ただちに接種したい」人はわずか1割
まず、そもそも集団免疫とはどういうものか見ていこう。
新型コロナに限らず、感染症の拡大防止には「集団免疫」が重要とされている。これは、集団内に免疫を持つ人が多ければ、感染症が流行しにくくなることを利用した感染拡大防止の考え方を指す。
具体的には、ワクチンの予防接種等により、集団内の免疫保持者を一定割合にまで高めておくことを意味する。新型コロナの感染力にもよるが、おおむね6~7割の人がワクチン接種によって免疫を持てば、集団免疫が確立するといわれている。
ただ、日経新聞が昨年末に行った世論調査によると、新型コロナのワクチンが承認された場合、「ただちに接種したい」という声は、約1割と少数派だ。7割程度の人が、「副作用の発生などの状況をみてから接種したい」としており、「接種したくない」との声も1割程度ある。ワクチン接種には、慎重な人が多いようだ。