トランプ大統領は、アメリカを蘇らせるために移民が入って来られないようにしよう、と呼びかけた。移民は人殺しが多く危険である、とも言った。もちろんデマゴーグだが、そうやって、さまざまな思想を持つ白人中産階級の支持を次々と取り付けたのである。
移民を嫌い、昼間からビールをあおって不平不満を語り合うような若者たちは、トランプ大統領の言葉に惹きつけられ、トランプ氏の味方をすれば仕事もカネももらえると考えた。トランプ氏は、自分は起業家として成功したからそれができると宣伝したが、それは嘘であった。自分も父親の事業を引き継いだだけだし、移民を追い出したら経済が復興するというのも荒唐無稽である。
トランプ大統領の「アメリカ第一主義」は、社会で落伍した白人、穏健な共和党員を毛嫌いする過激な右派たちに幻のユートピアを見せる舞台だった。その観客たちが、主演俳優の声に反応して議事堂に乱入したのである。
だから、トランプ大統領の任期が尽きても「トランプ劇場」は終わらないだろう。トランパーたちは、最後までトランプ大統領を支持し、トランプ氏の夢を果たそうとするだろう。すでに、民主党のリベラル勢力であるペロシ下院議長やシューマー上院院内総務、バイデン次期大統領らを誘拐したり、暗殺する計画を持っている集団もあるといわれている。
さらには、トランプ氏を批判したマスコミ関係者を襲撃する計画もあるという。メディア各社は実際にオフィスの警備を強化しているから、少なくとも彼らの情報網には具体的な危険が報告されているのだ。どんな激しい選挙でも、こんなことは過去になかった。
最も具体的な危機は、トランパーたちが各州の州都で、ワシントンと同じような騒動を計画していることだ。計画の一部は発覚しているが、過激集団はいくらでもある。イスラム・テロとの戦いが終わらないように、叩いても取り締まっても、次々と新しい集団と“戦士”が生まれるだろう。国防総省は、バイデン氏の大統領就任式が行われる1月20日には、ワシントンに州兵1万5000人を派遣すると発表した。トランプ氏の就任時の倍以上である。しかし、それでアメリカが安全になるわけではない。