新年を迎えたばかりの1月3日、神奈川県横浜市でひとり暮らしをする60代男性の新型コロナウイルス陽性が確認された。年齢や基礎疾患などを点数化する入院基準のスコアは入院相当だったが、保健所の判断で男性は自宅療養になった。
翌日夜に県の担当者が電話で確認すると、男性の血液中の酸素濃度は通常値より大幅に低かったが会話はできていたので、その時点でも入院することはなく経過観察だった。
事態が急変したのは6日。自宅を訪れた親族が目にしたのは、ぐったりと倒れた男性だった。男性は救急搬送された病院で死亡が確認された。
4日夜から6日にかけて県の担当者は電話で安否確認することも、自宅を訪問することもなかった。県の職員によるデータ入力に漏れがあったため、男性の情報が共有されていなかったという。男性の死後、神奈川県の黒岩祐治知事は県の対応に問題があったとして謝罪したが、故人は戻らない。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘する。
「自宅療養で急変した際に病院に搬送するチェック体制を組んでいなかったのは、行政の準備不足です。特別な対応をしなくても第1波、2波でうまくいったので油断したのでしょう。この先はさらに感染者が増えると予想されますが、この男性のような犠牲者が続出することが懸念されます」
自宅療養中の死亡だけではない。感染爆発が叫ばれるなか、新型コロナによるさまざまな「死」が、足音を忍ばせて近づいている。
基礎疾患があるのにすぐに入院できない
新型コロナの第3波が猛威を振るい、感染者増加に歯止めがかからない。現在、全国の新規感染者数は1日6000人前後で推移している。そこで喫緊の問題になっているのが、自宅療養者の増加だ。
医師が入院の必要がないと判断し、重症化リスクの少ない軽症者や無症状者は、「宿泊施設」や「自宅」での療養を選択できる。実際、第3波とともに自宅療養の数は増えており、東京都では8452人に達する(1月12日現在)。