もはや誰が新型コロナに感染してもおかしくなくなり、もし感染しても「無症状」「軽症」で済むなら不幸中の幸いと考えている人が多いことだろう。だが、油断は禁物。このウイルスは軽症者を一気に死に追いやることがあるからだ。
「昨年末、新型コロナに感染し、軽症と診断されてホテルで療養中だった50代の男性が亡くなりました。その日も普段通りに朝食をとり、電話で担当者と話し、大きな異常もなかったようですが、電話を切った直後に容体が急変。亡くなるまでわずか数時間だったそうです」
そう話すのは、自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長の讃井將満医師だ。
新型コロナ治療の最前線で闘い続け、ウェブサイト「ヒューモニー」で軽症からのコロナ突然死について警鐘を鳴らしてきた讃井氏は、「普通に会話することができた患者が、わずか1~2時間で急変、亡くなるケースは珍しくありません」と言う。
目下猛威をふるう「第三波」の収束の気配は窺えない。厚労省は1月8日、新型コロナ患者の病床使用率を公表。東京、大阪、兵庫など11都府県で病床稼働率が50%を超え、政府の対策分科会が示すステージ4(爆発的感染拡大)の指標に達した。そのため、無症状・軽症者の多くは、自宅での療養が増え、その数は全国で1万7451人(1月6日時点)にのぼる。
自宅療養でも、病院や市区町村の担当者との連絡で健康状態を確認してもらえるため、安心しがちだが、発熱、倦怠感、味覚や嗅覚の異常といった症状のみで、息苦しさがないまま経過し、急激に症状が悪化し、医師の処置も間に合わないまま急死するケースが報告されている。
1月6日には、横浜市で自宅療養中だった一人暮らしの60代男性が亡くなっているのが発見された。男性に基礎疾患はなかった。1月3日に新型コロナ感染が確認されたものの体調もよく、本人の希望もあって自宅療養に。翌日夜、県の担当者との電話でも会話ができていたというが、その後、連絡が取れなくなり、家を訪ねた親族が倒れている男性を発見した。
神奈川県の黒岩祐治知事は「安否確認の強化に取り組むなかで痛恨の極みで、心からおわびする」と謝罪している。