若手がそろうキャストに実力派の脚本家
ではなぜ土曜の30分番組は、他局のようなバラエティではなく、2作ともドラマなのか。テレビ朝日系はプライム帯に3つのドラマ枠(水曜21時台、木曜20時台・21時台)を放送していますが、視聴者層が中高年層メインの作品が大半を占めています。
これまで『相棒』『科捜研の女』『特捜9』『遺留捜査』『警視庁・捜査一課長』『刑事7人』などのシリーズ作を放送し、それなりの世帯視聴率を獲得してきました。しかし、「スポンサー収入としては頭打ちの状態が続いている」と言われているほか、『TELASA(テラサ)』や『ABEMA』と絡めたネット展開を考える上で、より若い40代以下に向けたドラマ制作が欠かせないようなのです。
実際、『書けないッ!?』には主演の生田斗真さんと菊池風磨さんのジャニーズ勢を筆頭に、岡田将生さんや山田杏奈さんなどの若年層を意識したキャスティングが見られます。また、『土曜ナイトドラマ』で放送される『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』も主演の小芝風花さんを筆頭に、工藤阿須加さん、水沢エレナさん、加藤清史郎さんと若手俳優が目立つキャスティング。どちらも、ほっこりとできる世界観の作品であることも含めて、40代以下に向けた作品である様子がうかがえます。
この2作で特筆すべきは2人の脚本家。『書けないッ!?』は、『HERO』『ガリレオ』(フジテレビ系)、『龍馬伝』(NHK)などを手がけた福田靖さん、『モコミ』は、『僕シリーズ3部作』『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)、『ファイト』(NHK)などを手がけた橋部敦子さんと、23時台にしては豪華な顔ぶれであり、テレビ朝日の意気込みが表れています。
かつては民放各局で「ドラマを2作続けて放送する」という編成が見られましたが、現在ではごくわずかになりました。しかも30分×2作はさらに珍しいだけに、テレ朝の戦略は今後のドラマ業界を占う意味で興味深いのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。