新型コロナウイルスの再拡大と、それへの対応をめぐり、支持率が急落している菅政権はいつまで存続できるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、菅政権の政策について論じる。
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遅ればせながら再び「緊急事態宣言」が発令された。新型コロナウイルス禍という出口が見えないトンネルの中、泥縄式の対策で右往左往する菅義偉政権への国民の批判は高まる一方だ。
昨年末は、菅義偉首相がインターネット番組で「ガースーです」と自己紹介して笑いを取りにいったことや、銀座の高級ステーキ店で自民党の二階俊博幹事長らと高齢者8人で会食したことが問題視されたが、国民の大半が自粛要請に応じて苦労している時に、率先垂範すべき首相が危機感ゼロの能天気な発言や行動をしていたら、非難を浴びるのは当然だろう。
もとより菅首相の最大の問題点は、確たる国家観も5年後10年後の国家ビジョンもないことだ。国づくりの政策理念として掲げた「自助・共助・公助」は小学校で教えているレベルの話であり、それでは日本をどういう国にしようとしているのか、さっぱりわからない。具体的な政策も「行政のデジタル化」「携帯電話の料金引き下げ」「不妊治療への保険適用の拡大」「国内の温暖化ガス排出を2050年までに実質ゼロ」「地銀再編」「NHK改革」「中小企業再編」など幹が見えない七夕の短冊みたいで、かつての民主党政権のようだ。
良し悪しはともかく、安倍晋三前首相には憲法改正、安保法制、教育基本法改正といった国家観や国家ビジョンがあった。過去の代表的な例は、田中角栄元首相の「日本列島改造論」、中曽根康弘元首相の「三公社民営化」や「日米イコール・パートナーシップ」である。
菅首相には、そういう大きな構想や目標が何もない。安倍前首相の「負の遺産」のアベノミクスを継承しているだけである。しかも、菅首相の後ろ盾の二階幹事長は、旅行業界と土木建設業界を牛耳っている「Go Toトラベル」「国土強靭化」「IR(統合型リゾート)」などの旗振り役であり、やはり国家観や国家ビジョンがあるとは到底思えない。
だから菅首相は、ほぼ毎日、朝食をホテルのレストランで秘書官らと食べ、夜も高級レストランでブレーンの経営者や学者、内閣官房参与、マスコミ幹部らと会食して(昨年12月17日以降は自粛)アドバイスを求めている。それを基にキーワード一発で政策・施策を決め、自分の頭の中で全体を組み立てていないから、散弾銃のように一貫性のないものになってしまうのだ。