「私は一切薬を飲んでいませんが、風邪をひくこともなく、血圧や血糖値、コレステロールの数値も問題ない。足腰が丈夫なのでどこへでも徒歩で出かけます」
そう話すのは95歳の薬剤師・玉那覇康高氏。薬局を経営していたが、「薬は飲まないほうが健康になれる」という考えに至り、薬局を畳んだという。『壮快』2月号で、「新型コロナに負けない免疫力強化術」を紹介したことでも大きな話題を呼んでいる彼が実践する健康法とは。
薬漬けが医原病を引き起こす
大正15年(1926年)に沖縄で生まれた玉那覇氏は現在も那覇市内で自立した1人暮らしを続けている。
「小学生の頃は県内の健康優良児大会に出場するほど体が丈夫でしたが、赤痢にかかったことが原因で徴兵検査は不合格になりました。その結果、同級生の多くが戦死した凄惨な沖縄戦に加わることなく死を免れた。人間、何が幸いするかわからないものです」(以下「」はすべて玉那覇氏)
そう振り返る玉那覇氏は戦後、米軍施政下の沖縄で大学特別入試に合格して現在の東京薬科大学に進学、薬剤師免許を取得した。1957年には那覇市内で「玉ナハ薬局」を開業し、50年以上にわたり営んできたが、「人は薬をやめたほうが健康になれる」という結論に達し、5年前に薬局を閉めた。
どうしてそのような信条を持つに至ったのか。
「現代医学は一見、進歩しているように見えますが、それは診断技術が進歩しているだけです。治療面は薬や手術などに頼るしかなく、食事や運動などを含めた総合的な根本治療をしているわけではない。
実際、昔より医師の数や薬の種類は増えたのに、病人は減っていません。実はこの状況は50年前から変わりません。患者も、一度薬を飲むと死ぬまで薬と縁を切ることができない“薬漬け”状態になる。
年間約43兆円という膨大な国民医療費のうち、約20%が薬代です。薬には副作用があることを忘れてはいけません。患者を薬漬けにして医原病を引き起こしている―薬剤師をしながら、そういう日本の医療システムに大きな疑問を感じていました」
玉那覇氏は、「病気は根本から治すべき」と主張する。
「頭痛が起きて頭痛薬を飲めば確かに良くなる。ただし、それは一時的に治す対症療法であって、根本原因を正すわけではない。いつまでも痛みは繰り返すことになります。そこで薬に頼らずに根本から治すべきだという思いを強くしたのです。
そもそも病気は医師や薬が治すものではなく、自分の体の中に備わっている自然治癒力が治すものです。医師や薬はその治癒力を十分に発揮させるための処置をしているにすぎない。それなのに現代医学では、専門に細分化しすぎたせいで人間全体を総合的に見ることをしていません。そのことが、病気を悪化させている。
病気は今までの食生活や心の持ち方の間違いから起こるもので、正しい食事法、運動法などを心がけたり、自然治癒力に任せることによって案外簡単に治っていくものなのです」
風邪をひいたとき、熱が出れば解熱剤、下痢をすれば下痢止めの薬、関節痛があれば鎮痛剤が処方される。だが、玉那覇氏はこう言うのだ。
「発熱も下痢も痛みも、病気ではなく有害な毒素や細菌を駆逐するために体が自然に採用する『療法』です。薬をむやみに飲むことによってこれらの体の働きを止めてしまうと根本治療にならない。
たとえば風邪をひいたとき、悪寒がすることがありますが、これは静脈内に潜んでいる細菌をはたき出す働きなので、そのときにはかえって薄着をし、悪寒を助長すべきです。また、発熱したなら膝から下をお湯に20分ほどつけて体を温め、発汗を促すことで毒素や老廃物を汗とともに体外に排出することができ、風邪を根本的に治すことができます。
もちろん発熱とともに失う水分や塩分・ビタミンCは補給しなければなりません」