実際、年明けになって国際オリンピック委員会(IOC)の“重鎮”として知られるディック・パウンド委員は、英BBCの取材に、「(五輪開催を)確信することができない」と発言。パウンド委員は昨年、いち早く「延期」の可能性に言及した人物であり、その発言は極めて重い。角谷氏が続ける。
「無観客などでの開催を探ろうにも、来日する選手たちへのワクチン接種がどこまで可能なのかという問題が出てくる。ワクチンをいちはやく確保しているはずのアメリカでさえ、医療従事者や高齢者から接種を始めた段階で、国民に広く行き渡らせる数を確保するのにどれくらいかかるか、まだ不透明な状況です。約200か国が参加する五輪の開催に現実味はないでしょう」
中止の場合、日本経済への打撃は深刻だ。経済アナリスト・森永卓郎氏はこういう。
「開催されていれば得られるはずだった『観戦に訪れた人たちの消費支出』や『テレビの買い換え需要』など、消失する経済効果は5兆円近くになるという試算があります」
菅首相をはじめ政権幹部が“開催できる”と煽れば煽るほど、失望感のインパクトは大きい。
※週刊ポスト2021年1月29日号