W杯中、ヴィンピーと同部屋となり「ベスト8のさらに上へ」と話したのが、ピーター“ラピース”ラブスカフニだ。
ラピースも南ア出身。W杯全5試合にフル出場し、ときにはゲームキャプテンをつとめた。ラピースは母国との対戦をどう受け止めていたのか。
「スプリングボクスだと意識せず、いつも通りの結束とハードワークで、みんなが誇りに思えるような戦いをしたかった」
そんなラピースと日本ラグビーの出合いが“ブライトンの奇跡”だ。
2015年W杯。日本は南アと対戦した。ロスタイムに入り、南ア3点リード。セオリーならキックで同点を狙う場面で、日本はスクラムを選択。トライを奪い“史上最大の番狂わせ“を演じた。
母国のバーで観戦していたラピースは「歴史が生まれた」と感じた。
「最後まで勝利を目指しスクラムを選択した勇気に感動しました。勇敢さが日本の文化なのかと」
南ア代表候補に選ばれるが、出場機会が得られない。そんな時期、クボタからオファーが届く。
「ラグビーを続けられる時間は長くはない。新しい世界を見たいと日本行きを決意しました」
やがてクボタでの活躍が認められ、日本代表に。初めての合宿に驚く。
「すでに“ONE TEAM”の基礎がつくられていたのです。様々な背景を持つ選手たちが、日本の代表として同じ目的を共有する準備ができていた。多様な考え方、価値観からたくさんの選択肢が生まれ、武器になる。ダイバーシティが日本代表の強みとなっていた」
活動自粛を経て、新たなシーズンへ。ラピースは「また日本代表に呼んでもらえるよう、全力を出し切る」と語った。
「私は母国も日本も、同じくらい愛しています。もう一度、人生をやり直せたとしても、また日本代表としてプレーしたいと考えているんですよ」
【プロフィール】
ヴィンピー・ファンデルヴァルト/1989年1月6日生まれ、南アフリカ共和国出身。2013年よりNTTドコモレッドハリケーンズに所属。
ピーター“ラピース”ラブスカフニ/1989年1月11日生まれ、南アフリカ共和国出身。2016年よりクボタスピアーズに所属。
※週刊ポスト2021年1月29日号