海外出身の選手も多いラグビー日本代表。そのなかで最も多くの日本代表選手を輩出した国がトンガだ。距離にして8000km離れたトンガと日本ラグビーの歴史を振り返る。『国境を越えたスクラム』(中央公論新社刊)の著者・山川徹氏が取材した。
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日本が出場した9度のW杯で、桜のジャージを着たトンガ出身選手は15人を数える。ヤマハ発動機のヘル ウヴェは、2019年のW杯で、日本代表として活躍した5人のトンガ出身選手の1人だ。
「日本のラグビーについて聞いていたのは土のグラウンドで練習することくらい」と彼は屈託ない笑みをこぼした。
ウヴェは、ニュージーランドの高校を経て、拓殖大学に留学する。
「大学時代の目標がトップリーグでプレーすること。そのあと、前々回のW杯を見たり、日本人の妻と結婚したり、子どもを育てたり……。日本で暮らすなかで、自然に日本代表になりたいという気持ちになった」
決勝トーナメント進出を賭けたスコットランド戦後半。ウヴェは同郷の中島イシレリ、ヴァルアサエリ愛とともに密集の近くで幾度も身体を張り続け、勝利に貢献した。
しかしウヴェは「悔しかった」と漏らす。W杯で2試合の途中出場に止まったからだ。
「もっとW杯で試合がしたかったな。日本代表には、国や言葉の壁をこえて一緒になる、いい文化がある。次のW杯が新しい目標になった」