放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、プロが選ぶ一番うまい歌手・前川清と喜劇についてお届けする。
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“緊急事態宣言”が出るかもしれないなどバタバタしている1月4日、明治座の稽古場にて顔合わせと本読み。こんなご時世だからこそ笑ってもらおうと、私の企画で宅間孝行の脚色・演出による「よみがえる明治座東京喜劇」と「寄席」の豪華二本立て(1月29日より2月14日。今のところやる予定)。
喜劇の方は田中美佐子・前川清の爆笑コンビに原田龍二、東貴博、磯山さやか達が御陽気にからんでいく、まげ物・三木のり平喜劇のアレンジコメディ。稽古場で顔を合わせた前川清と私「こんなに沢山スタッフや出演者がいるけど、一番の高齢者は我々二人だネ。72歳。なるべく優しくしてもらおうネ」と確認しあう。
大きな稽古場、窓もあき換気もバッチリ、履き変えるスリッパも持参で感染対策も充分。私は若き日より前川の歌声は勿論、あのキャラクターが大好きで、その芝居が毎日見られるとあって楽しみで……。“クールファイブ”のことを「GS」が終わったあとに出てきた「ムード歌謡」と思っている人も多いだろうが、前川の身体の中にはジャズ喫茶などで培ったジャズやロックの血が流れているのだ。
いつだったかテレビで「プロが選ぶ一番うまい歌手は誰ですか」というアンケートを100人から取っていて、それによると1位と2位のツートップが、なっなっなんと前川清と玉置浩二。プロが聴いてもこの二人は「うまい」とうなるそうだ。この話を前川にすると「玉置さんは凄いですよ。もう天才だからあの歌声は……私なぞとうてい……」と「謙遜砂漠」の「そして謙遜」「長崎は今日も謙遜だった」。
「好きな喜劇人は?」と問えば「萩本欽一、東八郎、由利徹」とスラスラ出てきた。「サラッとしてるような東京のコメディアンが好きなんですよ」。さすがかつてはテレビで欽ちゃんと「コント54号」と名乗り爆笑をとっていた喜劇人&歌手である。