「今回のワクチン接種は人体実験だ!」「成分が不明なものを体に入れるわけにはいかない」。昨年12月から新型コロナワクチンの接種を始めたアメリカでは、そう抗議する人が増えている。ワクチンは“万能”ではない。メリットとデメリットを冷静に見つめ、正しい知識を得なければ、自分と家族の身は守れない──。
ワクチンは世界の救世主になるだろうか。日本に先駆けて、世界各国で接種が始まった。アメリカでは24時間いつでも接種できる施設やドライブスルー型施設が設けられ、イギリスではサッカー場や競馬場が臨時の接種会場になった。
その一方、早期の接種開始が待たれる日本では、水面下でこんなヒソヒソ話がかまびすしいという。
「ワクチン事情に明るい政府関係者や医療関係者の間では最近、『どのメーカーのワクチンがいちばん安全か』、『あのメーカーはやめておいた方がいいらしい』といった会話が盛り上がっています。知り合いの医師に『〇〇社製のワクチンを入手してほしい』と依頼する富裕層も少なくない」(医療関係者)
私たち一般の日本人にとっては「いつ自分の分が回ってくるか」が関心の的。だが、すでに接種が始まっているアメリカやイギリスなどでは、市民が「どのメーカーのワクチンを打つべきか」で熱心に情報交換をしており、一部の耳が早い日本人もすでに意中の製薬メーカーを決めているのだという。
「日本には国民皆保険制度があり、医師に処方された薬をのむことに疑いを持つ人は少ない。しかし、海外では自分で薬を選ぶ場面も多いので、ワクチンも例外ではなく、消費者が厳しい目で比較検討します。たしかに日本人だって自動車を買うときにはメーカーはあれこれ選ぶのに、命を預けるワクチンの製造業者には無関心というのはおかしな話です」(医療ジャーナリスト)
そもそもワクチンとはいかなるものか。
私たちの体内に異物が侵入すると、それを攻撃する「免疫」システムが機能して、異物の侵攻を防ぐ「抗体」をつくる。ワクチンとは病原体の一部を人工的に体内に送り込むことで、免疫システムを動かして抗体をつくりだし、ウイルスなどの感染を防いだり、感染した場合の重症化を防ぐものだ。さらに、ワクチンによって抗体を持つ人が増えて「集団免疫」が確立され、感染拡大を抑えることも期待できる。
新型コロナについては、日本政府は海外の製薬会社とワクチン供給の契約を結んでいる。具体的には、米ファイザー社(6000万人分)、米モデルナ社(2500万人分)、英アストラゼネカ社(6000万人分)の3社だ。この3社のワクチンは、すでに欧米を中心に接種が始まった。