歴史上の有名人が主人公になることが多いNHK大河ドラマ。そのため、ドラマ放送前から主役にまつわるイメージがある程度、世間で共有されていることが多い。ところが、2021年大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一には、戦国武将たちのような強いイメージが社会で共有されていない。それだけに、新しく立ち上がる国民的ヒーローへの期待が高まっている。ライターの小川裕夫氏が、生まれ故郷というだけではない縁の強さを持つ埼玉・深谷市が大河ドラマの渋沢栄一に寄せる期待についてレポートする。
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2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』は、資本主義の父とも呼ばれた渋沢栄一が主人公だ。渋沢を演じるのは、若手俳優の吉沢亮さん。91歳で生涯を閉じた渋沢を吉沢さんがどう演じるのかも注目される。それ以上に、500超の企業を興してきた実業家・渋沢がどのように描かれるのかも気になるところだ。
渋沢が興した企業は、現在も日本の経済界で重要な役割を果たしているものが多い。一例をあげれば、第一国立銀行(現・みずほ銀行)、日本鉄道(現・JR東日本)、抄紙会社(現・王子製紙)、清水満之助商店(現・清水建設)などがある。特定の企業名を全面に出さない風潮が強いNHKにとって、渋沢が興した企業をどう表現するのか興味は尽きない。
約一年間のロングラン放送だけに、大河ドラマがもたらす地域振興や経済効果は計り知れない。多くの地域・企業が「青天を衝け」の放送に期待する中、埼玉県深谷市は特に強い思いを寄せる。なぜなら、渋沢は現在の深谷市にあたる血洗島で生まれ育ったからだ。
深谷市は名産品の深谷ネギをはじめ、深谷ネギをツノにしているゆるキャラ「ふっかちゃん」などで市のPRに務めてきた。深谷市がふっかちゃんへ注ぐ愛情は揺るぎないが、それ以上に最近は渋沢のPRに力を入れている。市役所に「渋沢栄一政策課」という部署が設置されていることからも力の入れ具合が窺えるだろう。
「渋沢の生誕地である『中の家』をはじめ、その近くには渋沢栄一記念館といった渋沢とゆかりの深い施設があります。そのほか、近隣にも渋沢に関連するスポットが多く点在しています。昨年には、深谷市出身でドトールコーヒーの創業者でもある鳥羽博道名誉会長から約1億円の寄付があり、それを原資に渋沢栄一のアンドロイドを製作しました。現在、アンドロイドは渋沢栄一記念館で一般公開しています」と話すのは、深谷市渋沢栄一政策推進課の担当者だ。