深刻な業績悪化に伴い、工場閉鎖等のリストラを進めてきた日産自動車だが、ここにきて財務体質に余裕が出始めているとの報道も。今年は新型車の発売や既存車種のモデルチェンジも次々と予定している日産だが、果たして復活の狼煙となるのだろうか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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クルマを世に出す準備である完成検査を巡る不正、カルロス・ゴーン元会長の追放劇に始まった経営の混乱、そして巨額の最終赤字など、ここ3年ほどまるでいいところのなかった日産自動車。だが、ここにきて変化の兆しが見え始めている。
昨年末、主力商品のファミリーカー「ノート」をフルモデルチェンジした。旧型は欧州市場でも販売されていたが、新型は日本市場をメインにASEAN(東南アジア)やインドなど右ハンドル圏専売である。
速度の高い国向けがなくなったことでさらに低コスト化するかと思いきや、クルマを作るベースのプラットフォームは旧型がアジア向けの低価格車用だったのに対し、新型は欧州市場をメインターゲットとするルノーの同格モデルと共通のものへと、逆に引き上げられた。
当然価格は上昇するので販売の難易度は上がるのだが、日産はあえて難しい道を選んだ。西川廣人前社長はゴーン前会長放逐のクーデター前から「安物依存はやめる」と宣言していたが、ささやかながらもそれが形になったと言える。
一方で年明けの1月18日、日産が契約社員約800人を正社員化するという報道が駆け巡った。海外の不要な工場を閉鎖するなど身を切るリストラを行ったことによって財政的に余裕が出てきたため、人件費に経営の原資を手厚く投じることができるようになってきたのだという。
クーデター後、事業集約によって2023年度に営業利益5%の黒字体質を確保するという窮余の経営再建を打ち出した矢先にコロナショックに直面した日産。依然として世界経済の先行きが不透明な中、2021年度はその成否を占うきわめて重要な1年となるのだが、果たして復活はなるのだろうか。