中韓のキムチの起源を巡る論争が過熱している。昨年11月、中国メディアが「中国キムチの製造方法が国際標準になった」と報じ韓国ネットユーザーを刺激したことに続き、今年に入ってからも、韓国人YouTuberが「キムチは韓国の文化」と発言したことでさらに騒動が過熱、国を巻き込む騒ぎへと発展している。なぜこれほど問題がややこしくなっているのか。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。
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「ある文化の起源は韓国なのか、中国なのか」という、ネットではこれまでに何度も繰り返されてきたあるある話だが、デジタル時代の恐ろしさというべきか、その影響は国やビジネスにまで影響を及ぼすようになりつつある。
今回のキムチ論争の発端は、2020年11月24日、中国・四川省名産の漬け物「泡菜(パオツァイ、中国ではキムチの一種)」の製法が、国際標準化機構(ISO)の認定を受けたこと。中国メディアが、「中国の伝統食が『国際標準』になった」と報じたことで、キムチの本家を自認する韓国の怒りを買った。
問題なのは、韓国のキムチが、中国語では泡菜と表記されること。「パオツァイ流の作り方をしなければ正統なキムチとは認証されないのか」、「中国は韓国のキムチ文化を奪おうとしている」など、一部の韓国ネットユーザーが強く反発、中韓のメディアが大きく取り上げ、さながら国際問題の様相を呈した。ある韓国メディア記者が中国外交部の定例記者会見で「キムチに関する中韓の対立についてどう考えるか?」と質問したり、さらに韓国政府が「中国の泡菜に関するISOの認定と韓国のキムチは無関係」と異例のステートメントを発表する騒ぎとなった。
よく考えてみれば、訳語がたまたま一緒だっただけで、パオツァイとキムチは別物なのだから騒ぎ立てるほうがおかしい。ISOも騒ぎを予見していたのか、わざわざ文書に「(韓国の)キムチに適応されるものではない」との一文を添えているが、頭に血が上った人々の目には入らなかったようだ。
さて、これで話が終わりかと思いきや、2021年になって、新たな展開が始まっている。「YouTuber吊し上げ」という新たな戦場だ。
中国の美しい農村生活を映像にして世界的な人気を得ている中国のYouTuber・李子柒(リー・ズーチー)。世界各国にファンを持ち、フォロワー数は1400万人を超えている。彼女は9日に「大根の一生!」と題した動画を公開した。野菜の収穫からパオツァイの仕込み、調理までをまとめたものだが、韓国ネットユーザーからは「韓国の伝統を盗んでいる」という怒りの声があがり、動画には20万を超える批判コメントが書き込まれ、ちょっとした国際ニュースとして報じられた。
その約1週間後、今度は中国ネットユーザーが反撃に出る。韓国の大食いYouTuber・Hamzyのコメント欄で、中韓のネットユーザーがキムチ・パオツァイ論争で騒ぎ出し、Hamzy自身が中国を侮辱するコメントに「いいね」を付けたことで騒ぎが拡大。最終的に中国のマネージメント事務所がHamzyとの契約を解除する騒ぎへと発展した。ネットショップで販売されていた「Hamzyが使った調理機器」、「Hamzyが食べた食品」などもすべて販売中止になったという。