白鵬、鶴竜の両横綱をはじめ、初日から関取16人が休場という異常事態で始まった大相撲初場所。10日目には綱取り場所だった大関・貴景勝まで左足首のケガで休場し、相撲協会は終盤の取組編成に苦労した。大関・正代と前頭・大栄翔と正代の優勝争いは千秋楽までもつれる展開になったとはいえ、見せ場は極めて少ない土俵になってしまった。そんな中、「土俵の外」で話題を集めていたのが、NHKの大相撲中継で向正面の東花道脇(テレビ画面では左上隅)に映り込む、背筋をピンと伸ばした女性だった。
新型コロナ対策で観客がまばらな溜席の同じ位置、それも先場所から「皆勤」。凛とした佇まいもあいまって、相撲ファンの目に止まった。
ネット上では、〈毎日同じ場所で観戦している姿勢の良いマスク女性は誰だ〉〈溜席のワンピースの正座女性〉と話題になり、「有名歌手Kの知人のモデル」「大物タニマチTが持っている席だ」などの具体的な書き込みもあった。
白やピンクのロングワンピース、フレアトップス、プリーツスカートなど、日替わりの清楚系ファッションで、傍らに置かれた高級そうなバックも服装に合わせているのか毎日異なる。14日目となった23日は、白地に花柄をあしらった華やかなワンピース姿だった。
そして、ネット上では「溜席の妖精」なる呼び名もついた。
テレビ画面越しだけでなく、国技館で取材する相撲担当記者の間でも初場所序盤から話題になったが、彼女が何者なのかは謎のまま。場内警備を担当する若手親方に聞いてみたが、「いろんな知り合いから聞かれるけど、俺もわからないんだ。親方衆の間でも話題になっているんだけどね」というばかり。
中日頃には「貴景勝の後援会のメンバーでは」という情報も流れたが、貴景勝の休場後も現われたことで”デマ”と判明した。
彼女が連日座っている溜席は、「(今場所はコロナ対策で座席数制限を設けており)ネットやプレイガイドでは売り出されない、茶屋の常連客や親方が優先的に使用できる席のひとつです。協会や相撲部屋にそれなりに顔がきかないと、15日間通しで座ることはできないはず。また向正面は必ずテレビに映り込むので、視聴者の目にとまりやすいことはご本人も分かっているとは思います」(若手親方)とのこと。
13日目の打ち出し後、帰路につく彼女に国技館前で話を聞いてみた。観客が一斉に出てくる中でも、清楚な雰囲気と特徴的な服装でひときわ目を引く。意外だったのは、溜席では背筋をピンと伸ばしているので長身に見えたが、どちらかというと小柄なタイプだったことだ。声をかけると、涼し気な笑顔で会釈してくれた。