完全寛解、その後の不安
昨年6月には、がんの徴候が消失した状態の「完全寛解」となった。自身はもちろん、家族みんなで喜びを分かち合った。だが、時折、不安に思うことがある。それは……。
「根っからの仕事好きなので、いざ『外で仕事をしていいよ』となったら、休んでいたぶんを取り返したいという気持ちが逸ってしまうんです。すると、徐々に傍若無人な一面が表れてきてしまったんでしょうね。ある日、妻から『あなたはあれだけの大病をしたのに、また元の笠井信輔に戻るんですか』と一喝されました。
この言葉にはさすがにちょっと焦りましたよね。『元気になると、どうして家族から離れていくの? いまこそちゃんと家族と向き合うべきでしょう』と諭されました。
せっかく再構築した家族との関係です。妻や子供たちの笑顔を大切にしつつ、うまくバランスを取っていくことが、新しい私の生き方でもあると思います」
最後に、コロナ禍を生きる読者に向けて、笠井さんはこうアドバイスしてくれた。
「この殺伐とした時代に大事なのは、どれだけいろんな人と共感を持った関係を築けていけるかということだと思うんです。直接の接触ができないいまだからこそ、映像で気軽にコミュニケーションが取れるツールを活用するといいと思います。高齢のかたはなおさらのこと。苦手意識を持たずに挑戦してみてほしいです。
私の母親は81才ですが、Zoomで同窓会やらお茶会をやっていますからね。そうやってデジタルツールをうまく使いこなすっていうことが、このコロナ禍においてストレスをためず、安全でいながら人と人との絆を強めていく大いなる手段だと思うのです」
【プロフィール】
笠井信輔(かさい・しんすけ)/1963年4月12日、東京都出身。早稲田大学卒業後、1987年にアナウンサーとしてフジテレビに入社。大規模災害時には被災地の取材のほか、ボランティア活動にも積極的に取り組んだ。2019年10月に同社を退社し、フリーアナウンサーに転身。多方面で活躍中。
取材・文/加藤みのり 撮影/浅野剛
※女性セブン2021年2月4日号