バイデン政権の看板のひとつは「ダイバーシティ」である。女性やマイノリティを要職に次々と起用し、「ひとつのアメリカ」「移民国家としてのアメリカ」を演出しようとしている。しかし、移民を忌避し、黒人虐待をなかば黙認してきたトランプ政権の4年間で、アメリカ社会は深刻な分断に陥ってしまった。急すぎる逆バネは社会不安を増大させる。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、いよいよ不穏になってきたアメリカの苦悩をリポートする。
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トランプ前大統領がホワイトハウスを去ってわずか1週間で、懸念していた最悪の事態が現実のものとなった。アメリカ全土に様々なグループとして散らばる白人至上主義者たちが暴力行為に出るのではないかというのである。1月27日、国土安全保障省は、その危険が高まっていることを国民に警告した。
いち早く報じたニューヨーク・タイムズによれば、同省は「連邦議会議事堂への破壊的な攻撃は、個別の事件ではないかもしれない」と警告し、「議事堂事件によって勢いづいた暴力的な国内過激派による脅威にアメリカが直面している」と初めて認めた。記事によれば、国土安全保障省は2019年にはすでに白人至上主義者を国内テロの脅威だと名指ししていたが、トランプ氏はBLM(黒人の命は大切)運動で起きた暴力や破壊活動の責任は急進的左派にあると主張し、当時のホワイトハウス高官たちは、「国内テロ」という表現をしないよう同省に圧力をかけていたという。
バイデン氏の就任後、すでに一部では反政権を訴えるデモ隊が建物のガラスを割るなどの暴力行為に及んでいるが、議事堂暴動から続く混乱に乗じて、白人至上主義グループが、より広範で大規模なテロを起こす動きがあるというのである。