田中将大(32)の古巣・楽天復帰に、楽天ファンだけでなくプロ野球界全体が沸いている。メジャー移籍前の2013年シーズンには、24勝0敗という前人未到の記録を打ち立て、「開幕からの24連続勝利」と、前年から続けた「28連続勝利」は、いずれも日本プロ野球記録であるとともにギネス世界記録でもある。32歳という年齢からしても、まだまだ世界トップクラスの力を維持したままの凱旋だ。
とはいえ、田中が最後までメジャー残留を希望していたことは間違いなさそうだ。7年在籍したヤンキースは、FAとなった田中を放出した資金で早々に先発陣を補強し、しかもチームの年俸総額が「ぜいたく税」を取られる上限にほぼ達してしまったことから、高額年俸の田中を追加で雇う余裕がなくなってしまった。それでもメジャーにこだわった理由のひとつに、「メジャー年金」があったという指摘もある。
メジャーで10年プレーすると、60歳から年間2000万円強の年金が満額受け取れる。7年総額で1億5500万ドル(約160億円)という巨額の年俸をもらっていた田中だから、これは小さな額にも見えるが、満額年金は一流の証でもあり、メジャーのスターたちも、この「10年」を目標に頑張るケースは多い。これまで満額に達したのは、日本人では野茂英雄氏、松井秀喜氏、大家友和氏、イチロー氏の4人しかいない。田中はあと3シーズンをメジャーに過ごせば一流の仲間入りで、来年33歳で復帰できれば十分達成可能だった。
しかし、田中は楽天と2年契約を結んだ。1年後に大リーグ移籍が可能なオプトアウトの条件を盛り込まれているともいわれているが、いずれにしてもメジャー再挑戦を目指す田中の楽天復帰は、かつて黒田博樹がヤンキースから広島に復帰して「男気」と称賛された例とは少し違うのだという。楽天を選んだ理由について、担当記者はこう推測する。
「マー君の両親は、もともと住んでいた兵庫から楽天の地元・仙台に引っ越しましたから、日本に帰ってくるなら両親のいる仙台という気持ちがあったと思います。だから楽天は、マー君の日本復帰の可能性が出ると、いち早く情報収集に動き、獲得レースで大きくリードした。もうひとつの理由は、やはり資金的余裕でしょうね。実際には年俸9億円+出来高とされているが、親会社の楽天は、保有するJリーグのヴィッセル神戸で、イニエスタに3年33億円の年俸を出しました。マー君のメジャーでの評価はだいたいそれと同じくらいと言われていましたから、それだけ払える球団は、日本では楽天かソフトバンク、巨人くらいだった」