映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、出演映画『ヤクザと家族 The Family』が1月29日に公開された舘ひろしが、初めてフィルムではなくビデオカメラで撮影したドラマ『新宿鮫』のエピソードと、大河ドラマ『功名が辻』での織田信長役について語った言葉をお届けする。
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舘ひろしは一九九五年に始まるテレビドラマ「新宿鮫」シリーズ(NHK-BS)で、主人公の鮫島刑事を演じた。
「『新宿鮫』は『あぶない刑事』に比べると、内面に入っていくドラマでした。ですから、自分の中でもリアリティを追求する。そういう作品でした。
石橋冠監督がドラマを受ける時の条件が、主役は僕でということだったんですね。それで僕は三つの条件を出しました。
『新宿鮫』は僕にとって、いわゆるテレビのビデオカメラで撮る初めての作品でした。フィルムで育っているんで、ビデオの映像が嫌だったんです。映り過ぎて。
被写界深度が深いんで、どうしてもそうなってしまう。なので奥行きを出したい、スモークを焚いてほしい、と。
それから、あの原作の魅力は警察内の隠語を使っていることなんです。逮捕令状を『札』と言ったり、捜査本部を『帳場』と言ったり。そのセリフは変えないで、画面の下に字幕を入れてもらいました。
そしてもう一つは、テレビカメラだとどうしてもズームを多用してしまう。それを使わないでほしいと伝えたんです。被写体に寄る時はズームではなくドリー(カメラ自体を移動させて近づくこと)で必ずやってもらいました。僕は芝居にはあまり興味ないのですが、映像には興味があるんですよね」