アメリカでは、利権のためにバラ撒かれる予算を「ポーク(バレル)マネー」と呼ぶ。ポークバレルとはブタ肉を塩漬けにする樽のことで、かつてブタの塩漬けを奴隷に配ったことに由来する下品な言い回しである。
利権予算とは、奴隷制の時代からの悪しき因習だという侮蔑の言葉でもあるが、現代の日本で「ブタ金」にたかる霞が関のシロアリ官僚と族議員たちは、国民の命さえ守らず、その財産を奪おうとしているのだから、まとめて「ブタ箱」に放り込みたくなる──。
国会ではコロナ対策を謳った19.2兆円の第3次補正予算が与党の賛成多数で成立したが、菅義偉・首相は、野党からどんなに追及されても、1兆円あまりのGo To予算を引っ込めようとしなかった。自らを首相にしてくれた二階俊博・自民党幹事長(全国旅行業協会会長)の大事な利権だからである。
いつか見た光景だ。10年前、東日本大震災で日本が未曽有の被害に見舞われた時、政府は巨額の震災復興予算を組んだ。当時は民主党政権だったが、自民党が政権を奪還して安倍晋三内閣が誕生すると、復興を加速するという名目で予算は膨らんだ。総額32兆円にも達したが、その多くは被災地のために使われていない。
「国土強靭化」と称して、日本中で道路や港湾の改修を進めたのは、国交省などの役人と、家業がセメント製造で財をなした麻生太郎・副総理ら「土建議員」たちだった。
本当の被災者たちに振り分けられた予算はわずかで、例えば国立大学の耐震化工事とか、役所の建て替え、果ては無人島に防潮堤を作る予算まで通ってしまった。
ついには震災とも復興とも全く関係ないと思われる「東京スカイツリー開業プレイベント」「クールジャパンの推進」「米国での戦闘機訓練費」「南極でのシーシェパード対策費」などにまで「復興予算」が使われたのである。著書『国家のシロアリ』で復興予算の流用を追及したジャーナリスト・福場ひとみ氏は言う。
「国家予算というものが、各省庁が所管の組織や業界に補助金を流す仕組みになっているのです。それゆえ震災復興予算では1円ももらえない被災者がいる一方で、工場のガラスにヒビが入っただけで3000万円もらえた企業もある。コロナも同様で、霞が関と族議員にとっては、危機は利権を太らせるチャンスなのです」
復興予算の原資は復興特別税だ。役人と政治家の利権のために使われた、これらバカバカしい予算のために、国民は2037年まで増税に耐えなければならない。
そして、復興予算をあらかた使い切ったところに、コロナ禍が襲った。国家の危機を前に、役人と与党議員の頭には、「あ、またこれで新しい利権が作れる」という考えが浮かんだに違いない。