新型コロナウイルスへの対応を巡っては、民間病院の患者受け入れが少ないことが指摘されているが、それのみならず公的病院の一部にも関係者から厳しい視線が向けられている。国公立の大学病院が多数を占める全国87の「特定機能病院」について、「診療報酬の優遇措置などを受けながら、受け入れ数が極端に少ない」との指摘が出始めているのだ──。
地域のコロナ医療を担うはずの中核病院が揺れている。
600以上の病床がある北海道の旭川医科大学では、1月25日付で病院長の古川博之氏が電撃的に解任された。古川氏は昨年11月、新型コロナのクラスターが発生した民間病院からの患者受け入れを提案し、受け入れを許可しない吉田晃敏学長との対立が続いていた。
同病院では、先天性の病気の検診を予約していた少年について、「母親が新型コロナのクラスターが発生した病院に勤務する看護師」であることを理由に受診を拒否したとして、昨年12月に子供の父親が損害賠償を求めて吉田学長を提訴する騒ぎがあったばかりだ。
診療科や病床数が多い国立大学病院は地域医療の最前線に立ち、コロナ患者、重症者の治療にあたっているイメージがある。実際、新型コロナ患者を受け入れる病院は、小規模なところが多い民間病院で約2割にとどまる一方、大規模施設が多い公立病院で約7割、公的病院で約8割となっているが、その内実については疑問視する声がある。
「医療体制が逼迫するなか、大規模な公的病院等のなかに、コロナ重症者の受け入れ数が規模や能力に比して十分ではないと考えられる施設が多数ある。医療関係者から、そうした状況を問題視する指摘が出始めているのです」(厚労省関係者)
そのひとりが、元厚労相の塩崎恭久氏だ。
厚労省はこれまで、個別の医療機関のコロナ重症者受け入れ数を明確にしてこなかった。そうしたなか塩崎氏は、厚労省が自身に明らかにした1月7日時点の重症者受け入れデータを公にした。その内容に、多くの関係者が驚かされた。
受け入れゼロが22病院
1月13日付の塩崎氏のメルマガでは、大学病院が大半を占める「特定機能病院」(全国で87病院)の重症者受け入れ数について、こう記されている。
〈「10人以上」がたった6病院。「4人以下」が62病院もあり、受け入れゼロの先も、22病院に上るとのことだ〉