ソフトバンクが6年ぶりとなる社長交代を発表した。孫正義取締役会長は「創業者取締役」になる見込みだが、これまで同グループを牽引してきたカリスマ経営者は、今後どんな役割を担い、何を目指していくのか──。雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏がレポートする。
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ソフトバンクの社長交代が発表された。4月1日付で新社長に就任するのは副社長の宮川潤一氏。6年間にわたり社長を務めた宮内謙氏は会長となる。
今、携帯電話業界は、菅義偉・首相が官房長官時代から強く主張してきた「スマホ料金引き下げ」によって混乱が起きている。
ソフトバンクも、20ギガ2980円という格安プランを打ち出したが、これにより、来期の業績が悪化するのは間違いない。その危機を、創業間もない時期から孫正義氏とともに会社を支えてきた宮内氏ではなく、宮川氏の力で乗り切らなければならない。
宮川氏は現在55歳。実家は臨済宗のお寺で、宮川氏も花園大学文学部仏教学科仏教学コースで学んだものの、僧侶ではなく経営者の道を歩み、1991年にももたろうインターネット社長に就任。その後、名古屋めたりっく通信、東京めたりっく通信社長を務めるが、同社がソフトバンクに買収されたことでソフトバンク入りし、最高技術責任者としてソフトバンクのエンジニアを束ねてきた。
この経歴からもわかるように、宮川氏は通信技術のエキスパート。その宮川氏が社長になったということは、5Gやそれに続く6Gなど、技術革新の続く携帯事業をテクノロジーによって切り拓いていこうという意図が込められている。
代表権が外れるのは自然な流れ
しかし、この社長人事以上に話題になったのが、創業者であり、現在会長を務める孫正義氏のポストだった。4月1日を期して孫氏のポストは、「創業者取締役」となる。聞きなれない肩書きだが、取締役ファウンダーと考えればわかりやすい。現在との最大の違いは、代表権がはずれることだ。つまりこれまでよりは一歩引いた立場で、会社経営を見守るということになる。
これはある意味、自然な流れだろう。孫氏は現在、持ち株会社であるソフトバンクグループ(SBG)の会長兼社長の立場にある。そしてこのところ、SBGは投資会社としての性格を強めている。それに伴い、孫氏は実業家から投資家へと自らのポジションを変えてきた。事業会社であるソフトバンクの代表権を手放すのは、その流れの中にある。