世界的ブームとなっているジャパニーズウイスキー。その輸出額は過去10年以上にわたって右肩上がりで、いまや年間200億円にのぼる。しかしなかには、海外の原酒を輸入し、国内でブレンド&瓶詰めしただけの商品をジャパニーズウイスキーと称して出荷する悪質な業者も存在する。
今回は、自前で蒸溜した原酒を、スコッチに倣うように最低3年以上かけて樽熟成したものだけをウイスキーとして出荷する正統派の蒸溜所、鹿児島の「嘉之助(かのすけ)蒸溜所」に足を運んだ。
日本のクラフト蒸溜所が注目されるきっかけとなったのは肥土伊知郎氏の秩父蒸溜所の成功だろう。さらに2014年のNHK連続テレビ小説『マッサン』人気で、それまで数か所しかなかったクラフト蒸溜所も、いまや全国各地に40か所以上も点在するようになった。なかでも次にブレイクが期待され、シングルモルトの出荷が待望されるのが嘉之助蒸溜所だ。
同所の母体となる小正醸造は138年の歴史を持ち、2代目の小正嘉之助氏が戦後に手がけた6年熟成の米焼酎「メローコヅル」を看板商品に、芋焼酎なども生産してきた。2017年からは4代目の小正芳嗣氏がモルトウイスキーの生産に着手。中村俊一所長が話す。
「日本酒は海外の方も飲まれますが、焼酎はなかなか難しい。まずは世界に通じるウイスキーを造り、その後、世界に焼酎を送り出そうと考えています。同じ蒸溜酒ですから、138年続く蒸溜の技術と、メローコヅルで培ってきた樽熟成のノウハウを活かせます」
嘉之助ウイスキーの独自性は、初溜と再溜の2基の蒸溜器(ポットスチル)を使用するのが一般的なところ、3基構えていることだ。
「再溜時に、異なる形状の蒸溜器を使うことで、味わいの異なる原酒が誕生します。鹿児島の気候は温暖なので、それぞれの原酒を樽詰めした後、寒い地域よりもスピード感のある熟成が期待されます」