コロナ禍では職場でも家庭内でも「新しい生活様式」を迫られている。以前とは勝手が違う毎日にストレスを感じている人は多いだろう。つい「コロナさえなければ……」とこぼしたくなる気持ちはよくわかるが、なかには「関係ないだろ」とツッコミたくなる言い訳も──。
食品メーカーの中間管理職・A氏(46)は、こう嘆息する。
「最近、社の会議で出てくるのは“コロナの影響で”という言い訳ばかり。
外出自粛や時短営業が大きく影響する飲食店向け商品の成績が上がらないのは分かるが、巣ごもり需要で調子がいいスーパー向けの商品だって出している。その部門まで“コロナで……”と言い出して、報告を受けた側も“仕方ないよね”と納得してしまう。こんな状態が続くようだと心配です」
「コロナのせいで」病──。その危うさを早くから見抜いていたのがユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長だった。同氏は『日経ビジネス』(2020年9月7日号)のインタビューでこう語っていた。
〈世界はコロナで変わったんじゃない。うわべだけのものが全部ばれ、本質的なものが要求されるようになったということです。
企業も政治家も官僚もそうでしょう。企業は業績悪化をコロナのせいにしているけれど、ちゃんとした経営をしていない企業は以前からしていないんですよ。それではだめ。変わる時代に合わせて行動、実行しないといけない〉
ファーストリテイリングは2020年9月~11月期においても前年同期比23%アップの営業利益を達成。柳井氏は自らの言葉を証明して見せた。
「コロナのせい」は業績不振だけでなく、社員の怠慢の言い訳にも使われる。
前出のA氏が続ける。
「営業成績が上がらないある若手社員は『コロナだから外回りできないんで』と言うけれど、電話やメールでマメに取引先とコンタクトを取って売り上げを伸ばしている同僚もいる。自分の努力不足を棚に上げていないか。まぁ、彼はコロナ前から決して成績はよくなかったが(苦笑)」
「コロナのせい」は至るところで使われる。ある企業の経理部社員・Bさん(40)が不満をぶちまける。
「経費精算や請求書などの提出期限を守らない人が増えてきています。催促しても“いやぁ、コロナなんで”とヘラヘラ。外回りが減ってデスクにいる時間が増えているのに」
取引先に迷惑をかけるケースも。
製造業の課長職・C氏(42)は、仕入先の若手社員に怒り心頭だ。
「納期遅れを指摘すると“緊急事態宣言が出て、諸々滞っておりまして……”と。“明日もってこい”というならともかく、こちらは1か月近く前から納期を提示している。ルーズさをコロナでごまかすな」
獨協大学教授で経済アナリストの森永卓郎氏が語る。
「コロナの影響でどうしても間に合わないという状況は当然起こりうる。しかし最近はそれをいいことに納期を簡単に破る会社が出てきているようです。かつてなら納期に遅れた企業は即出入り禁止となった。しかし、いまは責任の所在が曖昧になっています。
このような状況下でも確実に納期を守り、迅速に対応できる企業だということをアピールすれば今後のビジネスチャンスにもつながるはずですが……」