現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は3歳新馬戦について解説する。
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いよいよ2月、調教師として最後の1か月です。
私は2018年1月に厩舎の解散を発表しました。その年産まれる馬、つまり今年の3歳馬を預かっても、クラシックを戦うことはできませんという意思表明でした。にもかかわらず、3歳2月まででもいいからと、何頭か預けていただきました。本当にありがたいことですし、なんとかその期待に応えたいと思ってきました。
とはいえ、角居厩舎の馬として無理に使うことは考えていません。年が明けてからはスタッフが次の行き先や自分の担当馬かどうかの不安から浮き足だっています。こんな時は馬が壊れやすくなるので、とにかく馬を壊さないようにと言っています。1月中は1つも勝てませんでしたが、いまは結果より、無事次の厩舎に渡すことを第一に考えています。
角居厩舎は引退される二分久男先生から馬を引き継いで2001年3月に開業、早くも3週目に初勝利をあげることができました。スカイアンドリュウという休み明けの4歳馬でしたが、二分厩舎の管理馬として3歳6月に2勝目をあげてから休養してじっくり力を蓄えていました。厩舎としての2勝目もこの馬で、その次は重賞(京王杯スプリングカップ)を使うことができたのです。開業2か月目の重賞挑戦でしかも2着。これも二分先生が「無理に使うな」と指示してくれていたからです。この時の感動は忘れられません。結局、この年は二分厩舎から引き継いだ馬で10勝もあげさせてもらいました。新人調教師としてはこれ以上ないスタートが切れました。
なお、このスカイアンドリュウの4歳上の姉はタニノシスター、つまりウオッカのお母さんです。この一族はずっと角居厩舎を支えてくれていたということです。
ところで、今年から3歳新馬戦が今月までになりました。終わるのが例年より1か月ほど早い。未勝利戦があるからいいではないかというけれど、やはり経験馬相手ではよほどの素質がなければ勝ち切れません。馬主さんにしてみれば、新馬戦はわが子の小学校1年の運動会を見るような気持ちです。厩舎サイドにしても出走馬すべてが初めてのレースという新鮮な気分がしばらく味わえなくなります。