◆今も残る「中指、薬指、小指のしびれ」
PCR検査で陰性となって退院しても、それで終わりにならないのが新型コロナの恐ろしいところだ。梨田氏は退院後の体調管理についてこう話す。
「当初は1か月に一度、今も3か月に一度の検査で全身をチェックしてもらっていて、心肺機能は正常です。ただ、ボクは肩やヒザの関節に現役時代の古傷があるんですが、その古傷に痛みというか違和感が生じる時がある。あと、左右の手の中指、薬指、小指の3本にしびれるようなこわばりがあります。特に右手の症状がはっきりしている。痛くはないし、ちゃんと動くのですが、違和感が消えない。
退院後に精神的な落ち込みなども経験しましたが、周囲の温かい言葉もあって、だんだん前向きに考えられるようになった。そうやって時間が経過するとともに回復していく症状がある一方で、指先のしびれや古傷の違和感は消えないので、こちらは一生ものかなと思っています」
病院で意識が戻った当初、PCR検査は2日に1回のペースで計8回受けた。一度は陰性になっても、また陽性になるなどを繰り返したというが、陽性の結果が出ていた時期から、筋力を取り戻すリハビリに取り組んだ。
「リハビリの先生は防護服を着たりして大変だったと思いますが、そのおかげで比較的早く筋力が戻ったのだと思います。ベッドから立つ練習、ベッドに寝たまま腰を浮かせる練習、壁に手をついてかかとを上下させる運動などの簡単な動きから始めましたが、それも補助してもらってようやくできる状態でした」
退院後は、外出はできるだけ控えて、バーベルを持ってマンションの廊下を歩いたり、エアロバイクを使ったりしてトレーニングを重ねた。
「ベランダで日光浴もしましたし、スクワットや腹筋、腕立て伏せもした。マンション内を8000歩、1万歩と歩くこともあった。だんだん負荷をかけるようにして、体重もかなり戻りました。食欲も出てきたし、お酒も飲めるようになった。そういう状態になるまでに4~5か月はかかりました。
今は前向きにならなきゃいけないと思っています。野球もキャンプが始まり、開幕しますからね。自分でできることが増えれば自信もつく。もちろん、まだまだ体調管理で油断はできないし、社会のためにも感染予防に努めないといけないと思っています」
梨田氏は、「医療従事者の方々には心から感謝しています。私も、自分の体験を話すことなどを通じて、微力ながら社会に貢献したいと思っています」と締めくくった。
■取材/鵜飼克郎(ジャーナリスト)