視聴者はこれらの場面だけが編集された短い映像を目にする。そこには、嘘をついている時の手掛かりだと一般的に考えられている瞬きや視線・身体の揺れ、言い淀みや目をそらすといった不自然な間や動きは一切無いため、「真実バイアス」が起きやすい状況になる。真実バイアスとは、メッセージを受け取る側がその真偽にかかわらず、本当のことだと判断する傾向のことをいう。多くの人は、自分は嘘を見抜けると信じている所があるため、手掛かりがなければ見抜くのが難しいのだ。
嘘をつこうとしている者は、逆にその手掛かりを利用する。正直な印象を与えようとこれらの仕草を行わないようにするのだ。話し方や話の内容から嘘がばれないよう、言葉は短く、詳しい説明はしないのも特徴だ。
あちこちの情報番組で、政治評論家やコメンテーターらが次々と持っていた情報を暴露した。松本議員が最初に釈明した時には、いくつかのマスコミがクラブを訪問していたのが複数人であること、女性2人が同席していたという情報も既に掴んでいたという。いつも離党した3人でつるんでいたとも報じられた。そんなマスコミに囲まれながら、松本議員は平気でシラを切り通し、追及をかわしていたことになる。
当選回数7回のベテランである松本議員は、国対委員長代理であり元国家公安委員長だった。国家公安委員会のホームページには、「国務大臣である委員長と5人の委員の計6人で構成される合議制の行政委員会」であり、「国民の良識を代表する者」という文言が書かれている。コロナ禍で苦しむ飲食店を盾に平然と噓をつくことが、果たして国民の良識を代表していると言えるのだろうか。