熾烈な視聴率競争が続く朝の情報番組。3月下旬から新MCの起用などで一部の番組がリニューアルするが、新しく抜擢されたMCの特徴とは? そこからテレビ局側の狙いも見えてきた。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今年の春は、ひさびさに朝の情報番組に大きな動きが見られ、その内容や出演者が発表されるたびに話題を集めています。
まずフジテレビでは、『情報プレゼンター とくダネ!』が22年の歴史に幕を下ろし、3月29日から新番組『めざまし8』がスタート。メインキャスターを俳優の谷原章介さんと、同局の永島優美アナが務めることが発表されています。
次にTBSは、『グッとラック!』をわずか1年半の放送で終了させ、3月29日から新番組『ラヴィット!』をスタート。2月に入って同番組のMCを芸人の麒麟・川島明さんと、同局の田村真子アナが務めることが発表されました。
『めざまし8』の番組コンセプトは、前番組の『めざましテレビ』でストレートに扱ったニュースを深く解説するほか、独自の生活情報なども充実させる“大人のめざまし”。一方の『ラヴィット』は、一流のプロの「教えたくない“お気に入り=Love it/ラヴィット”」を通じて、買い物や食事などの暮らしが10倍楽しくなる情報を扱うライフスタイルバラエティ。
同じ日にスタートし、同じ時間帯に放送される両番組は、内容が大きく異なる一方、共通点はメインに起用した2人の美声。ともに落ち着いたトーンで聞き取りやすい声に定評があり、これまでもそれが起用理由の1つになってきました。
ながら見の多い朝と相性のいい美声
近年、ナレーターに人気声優を起用したり、ナレーション原稿に工夫を凝らしたりなど、テレビ業界で声を重視する傾向が強くなっていました。番組のジャンルを問わず、スマホやパソコンをさわりながらテレビを見る“ながら見”の人が増えたことから、声だけで好印象を与え、注意を引きつけることが求められているのです。
家事や外出の準備など、何かとやることの多い朝の番組はなおのこと。谷原さんと川島さんのような低く安定した声は聴きやすいだけでなく安心感があり、視聴者を穏やかな気持ちにさせます。さらにそのポジティブな効果は、スタジオや番組全体のムードにも波及し、「感じのいい番組」という印象につながることを期待されています。
川島さんは就任発表の際、「至らない部分もあるかと思いますが全力で務めさせていただきますので、番組を見てくれる皆さんの一日が楽しくなるよう、声も腰も低く低く頑張らせていただきます!」などとコメントを寄せ、声や腰の低さを期待されての起用であることをにおわせていました。
一方、谷原さんの就任コメントで目を引いたのは、「日々起こることを視聴者の方々の目線を意識し、そして僕自身の生活者としての目線で専門のコメンテーターの方に疑問をぶつけ、どんどん掘り下げていきたいです」「興味があることは全部!特に子供の問題や貧困は子育ての最中の僕にとっては気になる話題ですし、さらに今日本で起きていること全てに貪欲に関わって、知って、行動していきたい」。
「どんどん掘り下げて」「貪欲に関わって」といつも以上にエネルギッシュな姿勢を見せているだけに、谷原さんの美声が他番組以上に聞けるのではないでしょうか。