誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“夢の馬券生活”。競馬を題材とした作品も手掛け、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する作家・須藤靖貴氏が、減量騎手に注目して、逃げ馬について深堀りする。
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しゅっとハナに立ってスイスイ飛ばしてゴール板を駆け抜ける。逃げ切りのイメージはあくまで軽快。ということで斤量の軽い減量騎手に注目してみた。3キロ減の恩恵を受ける▲騎手の逃げデータである。
「減量が効いている間はとにかく前につけろ」と言われる。▲はデビュー5年未満、30勝以下。ベテラン・中堅勢と比して技術的に未熟といった理由から減量制度がある。馬の脚質にもよるが、逃げはそのメリットを生かす。馬込みに揉まれずコースロスなく走れ、仕掛けの精妙さにもとりあえず無関係。一心不乱に逃げ粘る。背も軽いし、若手の意気を感じて馬も気分が良かろう。
減量騎手にとって、逃げは恥でもないし役に立つ。ある調教師は「逃げて腕を磨く」と言う。巧くスタートし、折り合いをつける。そして馬がどこまで持つのか。その呼吸を騎手は覚えていく。陣営はどれだけ持たせられるのかを試しているところもあるのだった。
2020年の▲騎手、たとえば亀田や泉谷、秋山稔や小林凌などは巧く逃げるイメージがある。そのへんの実際は? どのくらいの割合で逃げて、その結果はどうか。
データを取るときの「逃げ」の定義。ハナを切ったときはもちろん、先手争いで4番手以内に付けた場合。「とにかく逃げる!」の意気を買った。減量騎手、よく逃げている。
逃げ率1位は秋山稔の.297(2割9分7厘。以下同)。騎乗350回のうち104回逃げた。1着10回、2着5回、3着9回。秋山稔の全体の3着内率は.150だが逃げると.230に上がる。勝利数17のうち逃げ切ったのは10。粘った。
2位は泉谷で.283。494レース中140回逃げ、33回馬券に絡んでいる。泉谷の2020年勝利数は19で、うち11回が逃げ切り。逃げた時の3着内率は.240。