今から半世紀前の1971(昭和46)年は、1970年の大阪万博と1972年の沖縄返還という歴史の節目に挟まれた年。ちなみに、今年2021年と1971年は日付と曜日の配置がまったく同じなのだというが、それはさておき、1971年が一体どんな年だったのか──。
「端的に言えば、アメリカ文化がなだれ込み、急に身近になった年。そして、新時代の始まりの揺り戻しとして、過去や田舎へ回帰するノスタルジーブームが戦後初めて起こった。そんなとても興味深い年ですね」
そう分析するのは、コラムニストの泉麻人さん。
「ニクソンショックで1ドル360円時代が終わり、変動相場制へ移行。パンタロンやホットパンツ、ジーンズ姿の若者が闊歩し、アメリカンクラッカーが流行。マクドナルドが初上陸し、ファストフードの食文化が入ってきたのもこの年です。その一方で、学生運動末期の物騒な騒乱が増えた時期でもある。水俣病、イタイイタイ病などの公害がクローズアップされ、光化学スモッグが問題視されました」(泉さん)
昭和のレトロ文化を研究している黒沢哲哉さんは、1971年について、こう振り返る。
「高度経済成長は1970年にピークを迎え、1973年のオイルショックをきっかけに景気が悪化。その間に挟まれた1971年は高度経済成長の終盤といえます。この年の“空気”は、当時のCM流行語によく表れます。
『がんばらなくっちゃ』(中外製薬・新グロモント)が新時代を迎える自分たちを鼓舞しているのに対し、『のんびり行こうぜ 俺たちは』(モービル石油)には過去や田舎への回帰願望がうかがえます。この年には、時代の変わり目に特有の“両極”な空気が混在していました」
新たな文化がなだれ込み、戦後サブカルチャーが芽吹いていたことから「ニッポンの青春時代」とも称されるが、テレビの世界では具体的にどんなことが起きていたのか。