日本に子供向けのおもちゃとして1970年代にもたらされたキックスケーター(スクーターとも呼ぶ)は、折り畳み式が輸入され始めた2000年前後から若者の間に流行、子供たちにも人気の乗り物となった。2010年代後半になると電動式が世界で普及し、シェアリングサービスで提供されたこともあって欧米だけでなくアジアでもブームとなった。一方、日本では道路交通法との兼ね合いがあり、電動自転車のようにシェアリングサービスで提供される乗り物にはなっていない。個人輸入などで所持している人はいるが、それが合法の範囲で使用されるどうかは所有者の善意に頼っているのが実情だ。俳人で著作家の日野百草氏が、近ごろ、目撃情報が増えている電動キックスケーターによるウーバーイーツ配達員を追いかけた。
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「自転車風違法電動スクーター(電動キックボード含む)のウーバーを蔵前署、上野署本所署管内で複数目撃しました」(報告者A、原文ママ)
また電動キックスケーターによるウーバーイーツ配達員(配達パートナー)の目撃報告だ。筆者のメールアドレスには様々な情報が寄せられるが、ウーバーイーツ関連では主に路上でじっと待つ地蔵、無届け車両で営業する白ナン、そして違法車両の3点だ。地蔵に関しては「『ウーバー地蔵』急増 都心の『子連れウーバー』は大丈夫か」、白ナンに関しては「増殖する『白ナンバーのウーバー配達員』はあまりにも危険だ」など執筆してきたが、違法車両、とくに名指しで3件のメール(本稿、報告者はA、B、Cとする)が寄せられている電動キックスケーターについては、筆者自身がこれまで目撃していないこともあり触れて来なかった。それにしてもウーバーの配達員、次から次に何でもありだ。
「ノーヘルで歩道走行もしていました。ウィンカーもライトもありませんでした」(報告者B、原文ママ)
電動キックスケーター(メーカーによって呼称は変わるが、本稿では電動キックスケーターとする)は、キックスケーターに充電式のバッテリーにモーターで動力をつけた二輪車である。それ自体は違法ではなく、私有地や許された場所で走る分には問題ないし、保安部品を装備した上で自賠責保険に加入し、ナンバーを取得すれば合法である。また最初から公道を走るように作られたとする商品も売られている。
日本では原動機付自転車(原付1種、以下原付)となり、公道走行のための保安部品(ヘッドライト、ウインカー、ミラー、ナンバー灯、テールランプ、ブレーキランプ、速度計、警音器など)を装備した上で自賠責保険加入、ナンバープレート交付となる。ただし20km制限のリミッターがついたものに限り、速度計やテールランプなどの保安部品が免除される。この条件よりさらにゆるい15km制限のモデルに関しては警視庁がヘルメット無しを認める方向で動いているが、いずれにせよ原付なので免許とナンバープレートの取得は必要だ。