「ごちそうさまでした!」。乾いた声がすると、精悍な顔立ちの力士がすっぽん料理店から出てきた。1月末、都内の繁華街。時刻は20時前。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の時短営業をきっちり守り、人数も4人で退店したのは、「令和の牛若丸」との異名をとる、イケメン関取の炎鵬(26才)である。
昨年11月には写真集『炎鵬 燃える小兵』が発売されるほどの人気ぶりだが、彼は今、大きな壁にぶち当たっている。昨年の11月場所は、西前頭11枚目の地位で3勝12敗と大きく負け越して、9場所守り抜いてきた幕内から十両に転落した。
「平成の牛若丸」と呼ばれた元小結・舞の海(52才)のように、小兵力士ならではの小技やスピードが持ち味だったが、ライバルたちに研究し尽くされてきて、易々と相手に捕まえられる場面が多くなっていた。あるスポーツ紙記者は「幕内に上がったころは99キロだった体重も昨年11場所時点では92キロにまで落ちてしまった。激ヤセといえる状態で、対戦相手と体重100キロ差ということもありました」と話す。
所属の宮城野部屋の関取は、実力差がありすぎる横綱・白鵬関(35才)と、同じ小兵の石浦関(31才)で、実際に本場所で対戦するタイプの力士が少ないとも言える。舞の海も11月場所で苦戦した炎鵬の状況を「(部屋の中に)ちょうど馬力のある幕内力士が1人いればいいのだが」と、新型コロナにより出稽古ができない状況に同情した。
そんな中、幕内返り咲きを目指していた1月の初場所直前には、兄弟子の白鵬の新型コロナ感染が判明。炎鵬らほかの力士15人はPCR検査で陰性だったが、濃厚接触の可能性があるため全員が全休となった。「相撲はブランクが開くと、とたんに弱くなったりする。炎鵬関は、太れない体質だから、なおさら不安は広がります。まだ若いので、とにかく稽古して、食べて、稽古しての繰り返しで、さすがにもう少し増量しないとこの先は苦しくなるのではないか」(前出・スポーツ紙記者)