会いたい人に会えない──そんな世の中となってしまったいま、大切な人を想う気持ちを伝える一冊の絵本が話題を呼んでいる。本誌・女性セブン連載「ゆうべのヒミツ」でもお馴染みの女優・室井滋さんが文を、絵本作家・長谷川義史さんが絵を描いた『会いたくて会いたくて』は発売するや重版が決定。大人も涙する人が続出の本作はどんなふうに誕生したのか。2人が明かした。
自粛生活中に人とつながることの素晴らしさを改めて感じた
『会いたくて会いたくて』は、小学生の男の子・ケイちゃんと、離れて暮らす大好きなおばあちゃんの心の交流を描いた物語。
室井さんが絵本の原作を書き始めたのは、昨春のこと。新型コロナウイルス感染拡大防止のために4月7日に緊急事態宣言が出され、ステイホームによって外出もままならなくなった“変わってしまった日常”に直面して、構想が生まれたという。
「ある日を境に巣ごもりの自粛生活が始まって、ライブや撮影など人が集まるお仕事は次々とキャンセルになって、親しい人と気軽に会って食事をすることもできなくなってしまった。誰かとつながることがこんなにも大変な時代になってしまったのかと、呆然としてしまったんです。その一方で、長い間ご無沙汰だった古い友人から事務所へ宛てて手紙が届くこともあって、思いがけない便りがとてもうれしかった。
自粛生活によって、人とつながることの素晴らしさを改めて感じることになったんです。こうして離れて会えない時代でも絵本を通じて伝えられる絆はきっとある、大切な人を想う気持ちを絵本にしようと決めました。いままでの私なら、このテーマは浮かばなかったと思います」(室井さん・以下同)
室井さんは執筆を始めて一気に書き上げたが、当初は世相をより反映したものになっていたという。
「ケイちゃんがマスクをしていて、おかあさんから“マスクを外しちゃダメよ”と言われるシーンなども入れていましたが、いつまでこのマスク生活が続くのか、当時はまるで見当がつかなかった。個人的にはマスクバージョンも気に入っていましたが、絵本が出るときにはもしかしたらもう世の中からコロナが消えて、マスク生活のことも、もう誰も覚えていないかもしれない。そう考えてやめました。
コロナが消えても、人に会えない、会うのを躊躇するような事態はまた来るかもしれないですよね。長くいつまでも読んでいただけるよう、どうしてケイちゃんがなかなかおばあちゃんと会えないかという理由も明確にはしませんでした」
何度か練り直して、コロナを連想させる文章は省いていったと室井さんは振り返る。だが1年近く経ったいまも、コロナは終息の兆しが見えるどころか、拡大を続けている。
「人々は変わらずマスクをしているし、感染者は増える一方でさらに深刻な状況になっています。絵本が出る頃には世の中が元気を取り戻して、“会いたい人に会えないなんて何を言っているのさ”と明るい方向へ変わっていると願ったのに、全然そうなっていないのは本当に残念です。ケイちゃんの想いもおばあちゃんの想いも、絵本を書いた昨年の春よりも、いまの方がもっと切実。この本を届けたい気持ちがどんどん強くなりました」