新型コロナウイルス感染後の「後遺症」が多くの感染者を悩ませている。なかでも、脱毛の事例が多いという。海外では、コロナに感染した米国の女優アリッサ・ミラノが、櫛でとかした際に大量に髪が抜ける動画を公開して話題となった。
コロナ回復患者を対象とするヒラハタクリニックの「後遺症外来」を訪れた約800人のうち、脱毛を訴えた人は49%にのぼる。国立国際医療研究センターが、コロナから回復した58人に聞き取りした追跡調査でも、男性9人、女性5人の計14人(約24%)が脱毛症になっていた。ただし、海外の調査では女性のほうが脱毛を訴えるケースが多いとする研究報告もある。
また、同センターの調査によれば、聞き取りの時点で脱毛症状が回復していた5人について、症状が続いた期間は平均76日間だった。見た目に大きな変化が生じる期間は、数か月に及ぶと考えられるのだ。
ストレスか、ホルモンか
髪の毛が抜ける原因は解明されておらず、専門家に聞いても、仮説が複数ある段階だ。
日本呼吸器学会理事長の横山彰仁医師は「精神的なストレス」が原因のひとつである可能性に言及する。
「ウイルスによって毛根細胞が傷害を受けるとは考えにくい。精神的なショックで脱毛が起きる事例は存在しますが、そういう因子が関係している可能性のほうが高いと考えています。ただし、現時点では断言はできません」
関西福祉大学教授の勝田吉彰医師は「ホルモン異常」を原因とする説を挙げる。
「加齢に伴う男性の脱毛も、アンドロゲンなどの男性ホルモンの分泌バランスが関係していますが、新型コロナの感染でもホルモン分泌に乱れが起きることが分かっています。それが脱毛の後遺症と関係しているとする説がありますが、はっきりしたことはまだ分かっていません」