誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“夢の馬券生活”。競馬を題材とした作品も手掛け、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する作家・須藤靖貴氏が、逃げ馬が勝つ3つの条件について深堀りする。
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逃げ馬が勝つにはいくつかの条件があるという。【1】人気薄でノーマーク【2】単騎逃げでスローペース【3】トップ騎手が人気馬(差し馬)に騎乗。【3】が面白く、人気馬が牽制し合っているうちに「ほんじゃ、お先に」と逃げちゃう。逃げ切ったときの条件はどんな塩梅だったか。一頭に絞って深掘りした。
人気薄ノーマークで穴を開けたといえばトーラスジェミニ(牡5歳 小檜山厩舎)。去年のエプソムCで逃げ粘っての3着(18番人気 木幡育騎乗)が記憶に新しい。配当は複勝33倍、3連複は73万円もついた。前走のダービー卿CTは11着(9番人気)。人気薄=前走大敗である。上位人気のサトノアーサー(レーン騎乗)、ピースワンパラディ(津村)、レイエンダ(ルメール)がゴーサインを図り合う中、府中の直線を逃げ粘った。3つの条件に合致する。
2020年は13回出走(!)のうち10回逃げて4勝。炎の逃げ馬である。
逃げ切ったのは1月の2勝クラス(木幡育、13人)、3月の3勝クラス幕張S(田辺、4人)、7月函館のOP巴賞(木幡育、2人)、12月の(L)ディセンバーS(吉田豊、4人)。エプソムC以降はそこそこの人気となっているので、1月中山のレースに注目した。
前走は12月阪神のクリスマスキャロル賞(15着、秋山真)。外枠からまずまずのスタートだったがハナを主張できず見せ場なし。人気を落として年明けの中山である。抜群のスタートから馬群を引っ張り、直線で呑みこまれそうになりながらも粘り切った。このときも上位人気馬にデムーロ、マーフィーが跨っていて、差し馬の仕掛けが遅れた様相である。逃げ切りレビューだから、そりゃまあ、そうなのである。「すんなりハナを切れて、人気の差し馬勢が牽制し合う展開になれば」という、かつて小欄で揶揄した二重タラレバ予想となってしまう。この好例を事前検討にどう役立てるか。