昨年いっぱいで活動休止した嵐が担当していた番組の後継として、各メンバーが単独で出演する番組がスタートしている。そのうちの1つが櫻井翔(39歳)メインの『1億3000万人のSHOWチャンネル』(日本テレビ系)だ。業界内で注目を集めるこの番組の編集・演出の特徴とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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嵐の活動休止に伴い、10年超の歴史に幕を閉じた『嵐にしやがれ』の後継番組として、今年1月16日にスタートした『1億3000万人のSHOWチャンネル』。放送前は「どんな番組になるのか想像がつかない」と言われていましたが、1か月間、計4回の放送が終わり、その全貌が見えてきました。
同番組のコンセプトは、「みんなの『やりたい』で作る放送局!」。芸能人、文化人、アスリート、視聴者など、「さまざまな人々の『やってみたい』『見てみたい』をどんどん実行していく」という番組内容は『嵐にしやがれ』から一変しました。
注目すべきは、オープニングのナレーション。「YouTubeにInstagram、TikTok、今や誰もが企画を考える時代。そんな今だからこそ、みんなが考えた、やってみたい企画にチャレンジする放送局、開局」というフレーズから、ネットコンテンツを意識した番組であることがうかがえます。
さらに1つ1つの企画内容を見ていくと、YouTubeを彷彿させる番組であることに気づかされました。どこがYouTubeに似ていて、どんな狙いが考えられるのでしょうか。
あえて静止画でネタバレさせる意味
前回6日放送の企画は、「中条あやみ、婚約発表の直筆FAXをキレイな字で書けるようになりたい」「櫻井翔、バースデーケーキを自力で作りたい」「ミルクボーイ、牛乳をろ過し続けたら透明になるのか」「めるる、ヘアピンを髪につけた数 日本記録を打ち立てたい」の4つ。
前々回1月30日放送の企画は、「今田耕司、めちゃくちゃいい電動自転車を買ったらどれだけ急な坂道を上れるのか」「羽鳥慎一、魚を華麗にさばいて娘にカッコいいと言われたい」「白鷗大学・岡田晴恵教授、たぶん今、日本で一番受けたい授業 世界の偉人と感染症」「アインシュタイン・稲田直樹、猫舌を克服して小籠包を頬張りたい」の4つでした。
テレビの構成作家が練り上げた企画というより、YouTuberの考えた企画に近いゆるさを感じさせます。「これまでのように作り込むより、あえてハードルを下げて気楽に見てもらえたら」という意図があるのでしょう。
演出面に目を向けても、カラフルなテロップ、多用される効果音、テンポを上げる小刻みなカット割り、ポイントの章立て、スタッフとの会話などは、「YouTubeの編集に近づけている」という印象。もともと日本テレビ制作のバラエティは毎分視聴率を獲り続けるために、ハイテンポで、笑いの手数を増やし、テロップやナレーションを詰め込む構成・演出で知られていましたが、この番組はそれを加速させた感があります。
そしてもう1つ見逃せないのは、本編のVTRがはじまる前にサムネイル画像を見せて、ある程度のネタばらしをすることで、見る人の興味を引いていること。たとえば、櫻井さんの企画では「自力でケーキを焼いて明らかになったのは…櫻井局長のヤバい一面」、羽鳥さんの企画では「魚さばきを猛特訓し、披露したけど……娘が1枚上手だった」、稲田さんの企画では「猫舌を克服して小籠包を頬張りたい……その夢はわずか10分で実現した」などと、あえてVTRの前にネタバレさせていました。
サムネイルでのネタバレは、興味を引いてチャンネルを変えさせない効果がある一方で、笑いや感動の絶対量を減らしてしまう諸刃の剣。まずクリックさせて視聴回数を稼ぎたいYouTubeの常とう手段ですが、長い時間最後まで番組を見せたいテレビに効果的かどうかはまだわかりません。このような構成・演出の面で実験的な番組と言えるのではないでしょうか。