いよいよ2月14日からスタートするNHK大河ドラマ『青天を衝け』。吉沢亮(27)演じる主人公の渋沢栄一は、日本初の銀行「第一国立銀行」(現・みずほ銀行)や日本郵船など500以上の企業を設立したことから、“日本資本主義の父”と称される存在だが、実際の父としても多くの子をもうけている。その数20人とも言われるが、そのほとんどが妾の子だったという。
『本当は怖い日本史』などの著書がある歴史エッセイストの堀江宏樹氏が解説する。
「渋沢は若い頃、後に将軍となる徳川慶喜に仕えて京都で尊皇攘夷に励みますが、その頃から好色ぶりは目立っており、新撰組の隊士と女をめぐって揉め、隊士が7~8人で押しかけてきたというエピソードが残されています」
明治になって名を成すと、行動は大胆さを増す。
「渋沢は何人もの妾を囲い、しかも妻や子供と暮らす自宅に妾とその間にできた子まで同居させたこともあります。
渋沢は周囲に『明眸皓歯(澄んだ瞳と白く整った歯を持つ美人)に関することを除いては、俯仰天地に愧じることなし(天にも地にも恥じることはない)』と語る一方、妻妾同居生活についても堂々と公表していました」(同前)
渋沢の艶福家ぶりは晩年にいたっても変わらず、なんと68歳にして妾の子ができたという。さすがにこのときは「いや、お恥ずかしい。若気のいたりで、つい……」と禿げた頭をかいたという(佐野眞一著『渋沢家三代』参照)。
最初の妻の死後、再婚した後妻が老いてなお盛んな渋沢について語った言葉が、息子の書いた本に残されている。
「父様も論語(渋沢の著書『論語と算盤』のこと)とは旨いものを見つけなすったよ。あれが聖書だったら、てんで教えが守れないものね!」(渋沢秀雄著『明治を耕した話』より)
渋沢は最期まで女に囲まれながら91年の長寿を全うした。
なんとも羨ましい人生だが、現代の倫理観からはかけ離れている。いったい大河ではどう描くつもりなのか。
「主演の吉沢亮さんは爽やかな好青年イメージですし、渋沢は明治日本を近代化させる先進的な人物像として描かれますから、妾を囲うような前近代的な部分はそぐわない。なかったことにするしかないのではないか」(NHK関係者)
意表を“衝く”展開を期待したい。
※週刊ポスト2021年2月19日号