〈前回の緊急事態宣言では2か月近い休業を経て、5月末に営業再開。果たして客足は戻るのだろうかと不安を抱いたが、その懸念は無用だった〉
営業再開をお知らせした途端、お客様から、次々予約が入りました。
ただ、新型コロナウイルスの心配がなくなったわけではないので、除菌・消毒を怠らず、施術時のソーシャルディスタンスを徹底しました。予約も30分置きに入れ、お客様同士がバッティングしないようにしています。
お客様が営業再開を楽しみにしてくださっていたのをスタッフたちも肌で感じたのでしょう。退職率がピタリと減りました。こんな困難な環境でも働ける場所がある。待っていてくださるお客様がいる。そうした喜びをいままで以上に感じ、仕事に使命と誇りを持つようになったのです。
〈もっとも、プライベートでは不運にも見舞われた。昨年10月、運動中に足を痛め、しばらくの車いす生活を余儀なくされてしまった〉
でも、それも考えようです。車いす生活をすると、新しい発見があるのです。この前、家族が『鬼滅の刃』が見たいと言うので、映画館に車いすで行ったんですが、それまで気づかなかった不便さや改善点を知ることになりました。
そうした経験を生かし、車いすのかたがたにも来ていただけるようなエステサロンにしようと思うようになりました。
これまでは、美容機器の関係で体が不自由なかたの施術をお断りすることもありましたが、その考えを改めました。体の不自由なかたが利用しやすいよう、広いスペースの部屋を作り、スロープをつけて、移動がスムーズにできるようにしようと考えています。
また、コロナで家族やスタッフと過ごす時間の大切さも実感しました。家での時間が増えたことで、家族との絆がより深まりました。
これは世の女性たちに強くお伝えしたいのですが、家族の中で母親が沈んでいたらだめ。お母さんは一家の太陽なんだから、美しく輝いていてほしい。女性が美しく、輝いて、世の中が明るくなる―私たち美容業界の使命はそこに尽きると思っています。
私は若い頃にたくさんの苦労をし、「失うものはない。だったら前に進むしかない」という思いでやってきましたけど、それはいまも一緒。
新型コロナウイルスの脅威はいつか解消する。解消したときに何ができるのか、その準備をいま、やっておくことの方が何より大切だと思っています。
【プロフィール】
たかの友梨(たかの・ゆり)/美容家。不二ビューティ(たかの友梨ビューティクリニック)会長。エステティックセラピスト協会会長。1978年に「たかの友梨ビューティクリニック1号店」をオープン。現在、全国87店舗を展開。「ミス・ユニバース」の審査員を務めるなど美のカリスマとして日々、活躍中。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2021年2月18・25日号